利用報告書

耐スクラッチ性の検討
小長谷 重次1), 野間 慶一2)
1)名古屋大学大学院工学研究科, 2) フジデノロ株式会社

課題番号 :S-14-NU-0013
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :耐スクラッチ性の検討
Program Title (English) :
利用者名(日本語) :小長谷 重次1), 野間 慶一2)
Username (English) :S. Konagaya1), K. Noma2)
所属名(日本語) :1)名古屋大学大学院工学研究科, 2) フジデノロ株式会社
Affiliation (English) :1) Nagoya University, 2) Fujidenolo, Co., Ltd.

1.概要(Summary )
プラスチック表面の耐引っ掻き性(耐スクラッチ性)の向上を目的とし、CeNF架橋体コート液の耐スクラッチ性に与えるCeNFの効果について検討した。

2.実験(Experimental)
2.1試薬
 2%CeNF/スラリー(ファイバー径:25nm、スギノマシン(株)製)、PVA505(クラレ(株))製)、カルボジライトV-02-L2(日清紡ケミカル(株)製ポリカルボジイミド)市販品を所定の溶媒で希釈した後、CeNF/PVA複合体の作製に使用した。なお、25nmCeNFの超音波処理により、14.、16nm径を得た。TEMPO酸化+超音波処理法により11nm径を得た。
2.2 CeNF/PVA架橋体の膜の作製
 PVA/カルボジライト混合液(カルボジライト/(カルボジライト+PVA)=0.2(重量比)に所定量のCeNFを添加し、スライドガラス板上へコート、そして予備乾燥処理、さらに110℃で2時間加熱処理を行い、架橋体膜を得、諸評価に行った。極細径のCeNFについても同様な製膜操作行い、諸評価を行った。なお、カルボジライトの反応度はFT-IRによる固体膜中のカルボジイミド基ピーク(2100cm-1)高さより判定した。
2.3鉛筆硬度(耐スクラッチ性)評価
 コート膜表面の耐スクラッチ性はJIS K5600-4のひっかき硬度評価法に基づいた鉛筆硬度より判定した。鉛筆硬度が高いほど耐スクラッチ性に優れる。
利用装置: ζ電位計、走査型電子顕微鏡、FT-IR

3.結果と考察(Results and Discussion)
3.1CeNF/PVA架橋体の耐スクラッチ性に及ぼすCeNF添加効果
 CeNF添加量が40%に増加するに伴い耐スクラッチ性は6~7Hに達し、カルボジライト未添加時の5Hから向上した。これは、架橋剤カルボジライトがPVAやCeNFの水酸基(-OH)及び微量のカルボキシル基(-COOH)と反応する結果、高硬度化すなわち耐スクラッチ性が向上したと考えられる。
 CeNF/(CeNF+PVA+カルボジライト)=0.4としたときのCeNF/ PVA架橋体におけるCeNF径と鉛筆硬度との関係は、CeNF径が14、16、25nm系ではCeNF/PVA架橋体の耐スクラッチ性に差が見られないが、11nm系では7Hとすぐれた耐スクラッチ性を示した。TEMPO酸化及び超音波処理を受けたCeNFは表面-OH基、-COOH基量がより多いので架橋反応がより進行し、架橋密度がアップし、高硬度化すなわち耐スクラッチ性が向上につながったと考えられる。

4.その他・特記事項(Others)
 なし。

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) 小長谷重次、古橋浩子、大橋達巳、多田熏、山田敏郎、野間慶一、「セルロースナノファイバー(CeNF)の耐スクラッチ性向上効果」成型加工シンポジア

6.関連特許(Patent)
(1) 小長谷重次、野間慶一、田口喜崇、宮崎秀樹“組成物、その組成物を積層した積層体、およびその組成物を形成するためのハードコート剤” 特開2015-160870、平27年9月7日(公開日)

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