利用報告書

耐凍性を有する針葉樹の枝芽構造の微視的解析
武田一夫1)
1) 帯広畜産大学 地域環境学研究部門

課題番号 :S-16-CT-0094
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :耐凍性を有する針葉樹の枝芽構造の微視的解析
Program Title (English) :Microscopic Analysis on Structure of Vegetative Bud in Conifer with Freezing Tolerance
利用者名(日本語) :武田一夫1)
Username (English) :Kazuo Takeda1)
所属名(日本語) :1) 帯広畜産大学 地域環境学研究部門
Affiliation (English) :1) Obihiro University of Agriculture and Veterinary Medicine, Department of Agro -Environmental Science

1.概要(Summary )
寒冷地で生育する針葉樹には、枝芽器官で氷を析出し、樹液濃度を高めて氷点降下を起こし、器官の凍結を防ぐ耐凍性を有するものがある。氷を析出するためには、器官組織に1μm大のピット(微細な孔)を有する多孔構造をもつことが必要になる1)。本利用課題では、氷を析出する枝芽器官の微視的構造を明らかにする目的で、枝芽の観察実験を行った。
2.実験(Experimental)
本実験では、予め氷の析出が確認されている樹種として2)、東京大学北海道演習林で採取したシベリアカラマツ(Larix sibirica)、カナダトウヒ(Picea glauca)、メタセコイア(Metasequoia glyptostrobides)から、枝芽部分を取り出して供試体を作成した。これらにナノスーツ法を施し、電界放出型走査型電子顕微鏡(FE-SEM:JSM-7800F)を用いて生きた状態での観察を試みた。
3.結果と考察(Results and Discussion)
Fig.1にカナダトウヒの枝芽のSEM写真を示した。枝芽には散発的に数μm大の微細な孔や溝が観察されたが、規則的な孔の分布は確認されなかった。これは、他の2樹種も、同様の結果が得られた。
氷を析出するためには、微細な多孔構造の存在が欠かせない。しかし、規則的に分布する孔の存在がなくても、溝によって氷の析出を実現することも可能である。今回の観察は常温下で行われたが、実際に氷が析出するのは氷点下であり、場合によっては-50℃近くになることもある。こうした温度環境下では、細胞の収縮によってより多くの溝が出現して、氷の析出条件が満たされる可能性が考えられる。このことを考慮すると、今後氷の析出を起こすような氷点下で観察する

Fig.1 カナダトウヒの枝芽のSEM画像

などの工夫が必要になると思われる。
4.その他・特記事項(Others)
・参考文献
1)武田一夫, 雪氷,75(4),pp.183-197,(2013)
2)酒井 昭,植物の耐寒戦略,札幌・北海道大学図書刊行会,226pp. (2003)
・謝辞
本研究の遂行にあたりまして、千歳科学技術大学の平井悠司先生にナノスーツ法とFE-SEM使用法のご指導をいただきました。電子顕微鏡使用には、同大河野敬一先生にご便宜を図っていただきました。また、試料採取にあたっては、東京大学北海道演習林の福岡 哲氏、木村徳志氏、大川あゆ子氏のご支援をいただきました。さらに、本研究は、JSTナノテクノロジープラットフォーム事業の試行的利用によって行い、東 陽介博士のご支援をいただきました。この場を借りて感謝の意を表します。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし
6.関連特許(Patent)
なし

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