利用報告書

蛍光性ユニットを側鎖に有するキラル高分子膜の凝集状態と表面特性
春藤 淳臣1), 田中 敬二2)
1) 九州大学 大学院統合新領域学府, 2) 九州大学 大学院工学研究院

課題番号    :S-19-KU-0039
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :蛍光性ユニットを側鎖に有するキラル高分子膜の凝集状態と表面特性
Program Title (English) :Aggregation state and surface properties for a film of a chiral polymer having a fluorescence unit in its side-chain
利用者名(日本語) :春藤 淳臣1), 田中 敬二2)
Username (English) :A. Shundo1), K. Tanaka2)
所属名(日本語) :1) 九州大学 大学院統合新領域学府, 2) 九州大学 大学院工学研究院
Affiliation (English) :1) Department of Automotive Science, Kyushu University
2) Department of Applied Chemistry, Kyushu University

1.概要(Summary )
 高分子固体材料を用いて光学異性体を分離・検出するためには、キラルな液体と接した界面における高分子鎖の振る舞いを理解・制御する必要がある。このような背景のもと、我々は側鎖配向に基づきキラリティーを誘起する側鎖型誘起キラル高分子を設計し、その膜表面近傍に存在する分子鎖は、キラル液体との接触に伴い、その局所コンフォメーションを変化させることを明らかにしてきた。本研究では、この概念を拡張するため、蛍光性部位を側鎖に有する側鎖型誘起キラル高分子を新たに設計・合成した。とくに、キラル液体と接したキラル高分子界面における膨潤挙動を評価し、不斉選択性との関係を明らかにすることを目的とした。

2.実験(Experimental)
 ナフタレンジイミド骨格とR体のキラルアルキル基を併せもつメタクリレートモノマーを合成した後、ラジカル重合によってキラル高分子、(R)-PNDIを得た。ポリメタクリル酸メチルを標準試料としたゲル浸透クロマトグラフィー測定の結果、(R)-PNDIの数平均分子量および分子量分布指標は、それぞれ19kおよび1.8であった。(R)-PNDIはクロロベンゼン溶液からスピンコート法によってシリコン基板上に製膜し、313 Kにて24時間減圧乾燥した。大気下、(R)-および(S)-1,2-プロパンジオール、(R)-PD、(S)-PD 存在下における(R)-PNDI膜の表面形態は、「環境制御型多機能走査プローブ顕微鏡」を用いて評価した。

3.結果と考察(Results and Discussion)
Figure 1は、(R)-PNDI膜の大気下、(R)-および(S)-PD存在下における形状像である。膜の一部をナイフで切削しており、像の左側および右側はそれぞれ(R)-PNDI膜とシリコン基板に対応する。(R)-PNDI膜の二乗平均面粗さ (RRMS) は、大気下、(R)-および(S)-PD存在下でいずれも0.35 nmであり、表面形態はPD中でも比較的安定であった。Figure 2は、(R)-PNDI膜の断面プロファイルである。大気下、(R)-および(S)-PD存在下における膜厚は、33.3  1.4 nm、48.0  2.1 nmおよび52.1  1.2 nmであった。したがって、(R)-PNDI膜は不斉選択的な膨潤挙動を示すことが明らかになった。

Figure 1. Surface morphology of (R)-PNDI film under (a) the ambient air, (b) (R)-PD and (c) (S)-PD.

Figure 2. Cross-sectional profiles for (R)-PNDI film under the ambient air, (R)-PD and (c) (S)-PD.

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし。
6.関連特許(Patent)
なし。

©2024 Molecule and Material Synthesis Platform All rights reserved.