利用報告書
課題番号 :S-16-JI-0005
利用形態 :技術代行
利用課題名(日本語) :質量分析を用いた複合成分の網羅的解析
Program Title (English) :Exhaustive analysis of biological sample by mass spectrometry
利用者名(日本語) :平 修
Username (English) :S. Taira
所属名(日本語) :1) 福井県立大学・生物資源学部
Affiliation (English) :1) Fukui Prefectural University, Department of Bioscience
1.概要(Summary )
生体試料のプロテオーム解析において、安定同位体標識タグ試薬を用いた質量分析法による発現比較は大変有効な手法の一つである。近年開発されたPy-Tag試薬は、化学的に安定であり、タンパク質・ペプチドに対する反応性がよく、分析方法も簡便でかつ比較的安価な標識タグ試薬である。
我々は、ヒト骨髄性白血病細胞株(HL60 cell)とその薬剤耐性細胞株(HL60R cell)における細胞内タンパク質の発現比較にPy-Tag試薬を用いることを試みた。Py-Tag試薬は、試料に加えて一定時間加熱するだけで、タンパク質またはペプチドのリジン残基に特異的に結合し、+175.15Daの誘導体を作ることができる(Py0)。更に、安定同位体であるPy6、およびPy12を用いれば、それぞれ+181.17Da、+187.19Daという質量差6、12の誘導体が得られる(Fig.1)。Py0、Py6、Py12を用いると、同時に3種類の検体のタンパク質発現比較が可能であるので、親株と耐性度の異なる2種の細胞株、あるいは親株と2種の異なる薬剤の耐性株などを解析することにより、薬剤耐性機序解明の一助になると考えられる。
図1 Py-tagの反応原理
2.実験(Experimental)
検証実験:トリプシン消化したBSAを等量ずつPy0、Py6、Py12でそれぞれ標識したのち、3種を等量ずつ混合し精製後、質量分析装置により測定した。
仕込み比は、Py-0:6:12=1:1:1である。
3.結果と考察(Results and Discussion)
BSAのトリプシン消化物である幾つかのペプチドについて、+175.15Da、+181.17Da、および+187.19Da に相当する同程度のシグナルが確認できた(図2)。
図2 Py-tag修飾BSA断片のMSスペクトル。Δ3ずつなので、Py-0,6,12それぞれがラベル化されている。
Py-tagの特徴に定量的なデータを付与できる。今回の結果は、相対強度の高さが揃っており、これは仕込み比が1:1:1であることを示している。
質量分析実験により、安定同位体・誘導体化試薬の有用性を示す事ができた。これは、発現量の異なる細菌株など煩雑なサンプルから同じ標的を検出する際に一度の測定で発現比較が可能であることをしめすことができた。
4.その他・特記事項(Others)
なし
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし
6.関連特許(Patent)
なし







