利用報告書
課題番号 :S-16-MS-1056
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :赤外・ラマン分光法による骨基質の分子組成の解析
Program Title (English) :Raman and infrared spectroscopic analysis for molecular composition of bone matrix
利用者名(日本語) :大嶋佑介1), 石丸泰光2)
Username (English) :Y. Oshima1), Y. Ishimaru2)
所属名(日本語) :1) 愛媛大学医学部附属病院先端医療創生センター, 2) 愛媛大学大学院医学系研究科整形外科学講座
Affiliation (English) :1) Translational Research Center, Ehime University Hospital、2) Department of Bone and Joing Surgery, Graduate School of Medicie, Ehime University
1.概要(Summary )
骨粗鬆症などの骨代謝疾患の病態理解において、破骨細胞による基質の溶解と骨芽細胞による再石灰化の均衡が破綻し、骨基質の脆弱性を引き起こしていることが知られている。本研究では、骨の機械的強度を担保している骨基質の化学組成、具体的には骨芽細胞が産生するコラーゲン分子に着目して、骨粗鬆症モデル動物の解析により骨粗鬆症における骨折リスク評価の新しい指標を見出すことを目的としている。具体的には、顕微ラマン分光法の分子分光学的計測を中心とした解析を行い、骨組織の光学特性を明らかにするとともに、コラーゲンの架橋構造の安定化にかかわるメカニズムの解明を目指す。これまでの研究で、廃用性の骨粗鬆症マウスの骨基質のラマンスペクトル計測を行い、コントロール群との比較においてラマンスペクトル上で変化が見出されている。この結果を踏まえて、より詳細な解析を行うとともに、糖尿病などの骨質低下を伴う疾患のモデルを用いた計測を行い、骨粗鬆症のメカニズム解明をめざす。
2.実験(Experimental)
C57BL/6Jマウスを用いて片側坐骨神経切除を行い、健側をcontrolとした。術後38週で両下肢骨を採取しDXAを用いて骨密度の測定、μCTを用いて脛骨近位骨幹端部骨微細構造の測定を行った。ラマン分光分析については、顕微レーザーラマン分光光度計を用いて、下肢骨を脛骨および大腿骨に分けて、それぞれ非脱灰の状態で計測を行った。顕微レーザーラマン分光光度計を用いたラマンスペクトルの解析では、術側と健側の骨基質における分子組成を比較するため、ラマンピーク強度比に基づく定量および定性分析を行い、骨強度の維持との相関が認められるラマンピークの探索を行った。また、励起波長は自家蛍光による影響がもっとも少ない785 nmで計測を実施した。
3.結果と考察(Results and Discussion)
DXA法による骨密度計測の結果では大腿骨、脛骨ともに健側と比較し低下していた。μCTによる骨微細構造の解析結果では海綿骨の微細構造と皮質骨厚、骨密度で健側と比較して有意な変化を認めた。これらの骨密度・骨微細構造のパラメーターと、ラマンスペクトルのピーク比を比較すると、carbonate/phosphate比(1069/960cm-1)、mineral/matrix比(960/1002 cm-1)が術側で健側と比較して有意な変化を認めた。本研究結果より、坐骨神経切除による骨粗鬆症モデルにおいて顕著な骨密度の低下と微細構造に変化が見られ、骨強度の低下が確認できた。ラマンスペクトルのピーク比ではmineral/matrix比が術側で上昇していたことから、ミネラルだけでなく、コラーゲン基質の減少が考えられ、骨質の低下が示唆された。また、carbonate/phosphate比も上昇しており、ミネラル中の組成においてcarbonateが増加していることからも骨質の低下が示唆された。
4.その他・特記事項(Others)
特になし
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) Yusuke Oshima, Mayu Akehi, Hiroshi Kiyomatsu, Hiromasa Miura, Proceedings of SPIE 10054 (2017)
(2) Yusuke Oshima, Yasumitsu Ishimaru, Ji-Won Lee, Sota Takanezawa, Yuki Imai, Hiromasa Miura, Tadahiro Iimura 第14回松山国際学術 シンポジウム大会(平成28年9月16日)
(3) 大嶋佑介、石丸泰光、明比麻由、清松悠、飯村忠浩、今井祐記、日野和典、三浦裕正 第43回日本臨床バイオメカニクス学会(平成28年10月8日)
(4) 大嶋佑介、明比麻由、清松悠、三浦裕正 第39回日本分子生物学会年会(平成28年11月30日)
(5) 石丸泰光、大嶋佑介、飯村忠浩、今井祐記、高根沢聡太、日野和典、三浦裕正 第39回日本分子生物学会年会(平成28年12月2日)
(6) Yasumitsu Ishimaru, Yusuke Oshima, Tadahiro Iimura, Yuuki Imai, Sota Takanezawa, Kazunori Hino, Hiromasa Miura Japan-Taiwan Medical Spectroscopy International Symposium (平成28年12月5日)
(7) Yusuke Oshima, Mayu Akehi, Yasumitsu Ishimaru, Hiroshi Kiyomatsu, Yuuki Imai, Tadahiro Iimura, Hiromasa Miura Japan-Taiwan Medical Spectroscopy International Symposium (平成28年12月5日)
(8) Yusuke Oshima, Mayu Akehi, Hiroshi Kiyomatsu, Hiromasa Miura Photonics West2017 (平成29年1月29日)
6.関連特許(Patent)
なし







