利用報告書

走査型透過X線顕微鏡(STXM)を用いた微生物による地殻内エネルギー獲得戦略の解明
光延 聖1), 大橋 優莉2)
1) 愛媛大学, 2) 静岡県立大学

S-15-MS-2002課題番号 : S-15-MS-2002
利用形態 : 機器利用
利用課題名(日本語) : 走査型透過X線顕微鏡(STXM)を用いた微生物による地殻内エネルギー獲得戦略の解明
Program Title (English) : Study on the mechanism of microbial energy acquisition process in ocean crust by STXM
利用者名(日本語) : 光延 聖1), 大橋 優莉2)
Username (English) : S. Mitsunobu1), Y. Ohashi2)
所属名(日本語) : 1) 愛媛大学, 2) 静岡県立大学
Affiliation (English) : 1) Ehime University, 2) University of Shizuoka

1.概要(Summary )
最近の研究によって、これまで生命活動が存在しないと考えられていた地下や海底下に、多種多様な微生物(主にバクテリア, アーキア)が生息することがわかってきた。特に、地球表面積の70%を占める海洋底下の岩石圏に巨大な海底下微生物圏が広がっていることが報告され、地球生命科学にパラダイムシフトが起きている。海底下微生物圏を支えるエネルギー獲得反応の1つに、海洋地殻(玄武岩)に含まれる還元体鉄(2価鉄)の酸化反応がある。珪酸塩鉱物を主体とする玄武岩は、水溶解性が低く生物利用性も低いため、微生物は玄武岩中の2価鉄を効率よく利用するための多様な戦略を有すると考えられている。しかし、直接分析の困難さなどから、微生物による玄武岩中鉄酸化機構には未解明な点が多い。
そこで本研究では、軟X線領域の走査型透過X線顕微鏡(STXM)を使用し、『玄武岩に付着した微生物細胞周辺の有機物種と鉄化学種を同時に分析、かつnmスケールの空間分解能での1細胞分析を実現する』ことで、微生物による玄武岩中の鉄酸化戦略、つまり海底微生物のエネルギー獲得戦略を分子レベルで解明する。

2.実験(Experimental)
本実験に用いる試料は、伊豆小笠原弧の深海底において鉄含有基質による微生物現場培養を実施した試料を用いる。使用した基質は、海洋地殻中に存在する2価鉄固体である玄武岩、パイライトを選択した。基質の粉末試料(粒径50~100 m)についてSTXM分析を実施した。試料は、窒化シリコン膜(厚み100 nm)上に分散させ、風乾させることによって分析試料とした。UVSOR BL4Uにおける測定は大気圧下に実施した。

3.結果と考察(Results and Discussion)
まず、試料に含まれる微生物のうちバクテリアだけを蛍光染色により選択的に染め分けた。その試料に対して、走査型透過X線顕微鏡(STXM)を用いて、バクテリア-パイライト付着面の炭素(C)および鉄(Fe)の化学状態をナノスケールで調べた。まず、C 1s NEXAFS分析の結果、バクテリアは付着面で酸性多糖類に富んだ細胞外有機物を産生していることが分かった。一般的に、酸性多糖類が存在下ではパイライトの溶解度が上昇することが知られており、微生物は鉱物溶解を促進するために、酸性多糖類を細胞外へ産生していることが推測される。次に、Fe 4p NEXAFS分析をナノスケールでおこなった結果、微生物-パイライト付着面には、ナノサイズのクラスター状の水酸化鉄鉱物が点在していることが確認された。FeのNEXAFSスペクトルの形状は、カルボキシル基などを含む酸性多糖類と鉄が錯生成していることを示唆しており、CのNEXAFS結果と調和的である。これらの結果は、微生物による生命活動によって海洋地殻の酸化風化が促進されることを示唆しており、地球化学、微生物生態学の観点からも重要な知見といえる。

4.その他・特記事項(Others)
なし

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
学会発表
Mitsunobu, S., Zhu, M., Takeichi, Y., Ohigashi, T, Suga, H., Sakata, M., Ono, K., Takahashi, Y.: Nanoscale identification of organic substances at microbe-mineral interface in bacterial leaching of pyrite by STXM, International Conference on the Biogeochemistry of Trace Elements 2015 (Fukuoka convention center, Fukuoka), abstract p. 395, July 2015.
6.関連特許(Patent)
なし

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