利用報告書
課題番号 :S-16-NM-0013
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :超分子ポリマーに関する研究
Program Title (English) :Investigation of supramolecular polymers
利用者名(日本語) :福井智也
Username (English) :Tomoya Fukui
所属名(日本語) :筑波大学大学院 数理物質科学研究科 物質・材料工学専攻
Affiliation (English) :Graduate School of Pure and Applied Sciences University of Tsukuba
1.概要(Summary )
自然界では、自由エネルギーだけでは説明のつかない複雑な構造や機能が創発される。近年、超分子化学においても、集合体形成における速度論的挙動が注目を集めており、時間発展する超分子システムがいくつか報告されてきている。しかしながら、幹細胞の分化現象のように、複雑に時間発展する超分子システムの創製は全く達成されていない。本研究では、準安定状態の超分子集合体が、ナノシートもしくはナノファイバーへ「分化」する現象を発見し、それを制御することに成功した。
2.実験(Experimental)
化合物の同定、および、超分子集合体の評価は、以下に記す分子・物質合成プラットフォームの共通機器をもちいて行った。
・NMR : 1H NMRおよび13C NMRの測定を行った。
・FT-IR : 超分子集合体をメチルシクロヘキサンに分散させ、KBrセルをもちいてFT-IRの測定を行った。
・共焦点レーザー顕微鏡 : ナノシートのメチルシクロヘキサン溶液をセルに密封し、液中観察を行った。
3.結果と考察(Results and Discussion)
ヘキシル基をmeso-位に修飾したポルフィリン誘導体6は、メチルシクロヘキサン溶液中、興味深い形態転移挙動を示した。
分子6を、メチルシクロヘキサンに加熱・分散させると、冷却に伴い速度論的にナノ粒子が形成された。この溶液を攪拌すると、数時間の誘導期の後、ナノ粒子が2次元ナノシートへ形態転移した。共焦点レーザー顕微鏡および原子間力顕微鏡による観察から、溶液中および乾燥状態のどちらにおいても、この超分子集合体がナノシートとして存在していることを確認した。
興味深いことに、攪拌の代わりに超音波照射を行うと、ナノ粒子は1次元ナノファイバーへ形態転移した。すなわち、分子6のナノ粒子は、ナノファイバーとナノシートへ「分化」する超分子集合体であることが示された。
さらに、この分化現象を応用することで、1次元と2次元のリビング超分子重合を達成し、超分子集合体のサイズ制御に成功した。
本研究により、超分子集合体の分化現象を発見した。さらに、従来よりも高いレベルで、分子の自己組織化を制御すること可能となった。
4.その他・特記事項(Others)
竹村太郎様、服部晋也様、李潔様におかれましては、NMR装置、FT-IR装置、共焦点レーザー顕微鏡の使用方法の説明やメンテナンス等、様々な場面で丁寧にご対応していただきました。この場を借りて御礼申し上げます。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) Mizuki Endo, Tomoya Fukui, Sung Ho Jung, Shiki Yagai, Masayuki Takeuchi, Kazunori Sugiyasu, J. Am. Chem. Soc. 2016, 138 (43), 14347-14353.
(2) Tomoya Fukui et al., Nature Chem. in press.
NIMSプレスリリース
(3) Tomoya Fukui, Masayuki Takeuchi, Kazunori Sugiyasu, Polymer. in press.
6.関連特許(Patent)
なし







