利用報告書

超分子ポリマーに関する研究
福井智也
筑波大学大学院数理物質科学研究科

課題番号 :S-17-NM-0017
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :超分子ポリマーに関する研究
Program Title (English) :Investigation of supramolecular polymers
利用者名(日本語) :福井智也
Username (English) :Tomoya Fukui
所属名(日本語) :筑波大学大学院数理物質科学研究科
Affiliation (English) :Graduate School of Pure and Applied Sciences, University of Tsukuba

1.概要(Summary)
 自然界では、自由エネルギーだけでは説明のつかない複雑な構造や機能が創発される。近年、超分子化学においても、集合体形成における速度論的挙動が注目を集めており、時間発展する超分子システムがいくつか報告されてきている。これまでに我々は、準安定状態の超分子集合体が、ナノシートもしくはナノファイバーへ「分化」する現象を発見し、それを制御することに成功している。本研究では、複数の分子から構成される超分子システムにおける、超分子集合体の分化現象について検討を行った。

2.実験(Experimental)
 化合物の同定、および、超分子集合体の評価は、以下に記す分子・物質合成プラットフォームの共通機器をもちいて行った。
・NMR : 1H NMRおよび13C NMRの測定を行った。
・FT-IR : 超分子集合体をメチルシクロヘキサンに分散させ、KBrセルをもちいてFT-IRの測定を行った。

3.結果と考察 (Results and Discussion)
分子5と6の混合系における超分子集合体の分化現象について検討した(Fig.1)。分子5のナノ粒子は、数時間の誘導期ののち、ナノファイバーへ形態転移する。一方、分子6のナノ粒子は、ナノファイバーもしくはナノシートへ時間発展的に分化する。興味深いことに、分子5と6が共集合した準安定状態のナノ粒子は、ナノファイバー状共集合体のみへ形態転移することが明らかとなった。分子5が僅か5 %しか存在しない場合においても、ナノシートへの分化は全く誘導されなかった。種々の測定から、混合系において、ナノシートの核形成過程は阻害されるが、ナノファイバー形成過程は阻害されないことが示された。本研究から、複数分子の混合系においては、複数の平衡が時間軸上で交錯することにより、超分子集合体の分化経路が決定されていることが明らかとなった。

Fig.1 (a)分子構造 (b)混合系における超分子集合体の分化現象

4.その他・特記事項(Others)
竹村太郎様、服部晋也様、李潔様におかれましては、NMR装置、FT-IR装置、共焦点レーザー顕微鏡の使用方法の説明やメンテナンス等、様々な場面で丁寧にご対応していただきました。この場を借りて御礼申し上げます。

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) T. Fukui, M. Takeuchi, K. Sugiyasu, Sci. Rep., 2017, 7, 2425.

6.関連特許(Patent)
なし。

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