利用報告書

近赤外光線免疫療法の胸部腫瘍への応用と基礎的メカニズム解明研究
佐藤和秀1),2), 西永侑子2)
1)名古屋大学高等研究院, 2) 名古屋大学大学院医学系研究科病態内呼吸器内科

課題番号                :S-19-NU-0021

利用形態                :機器利用

利用課題名(日本語)    :近赤外光線免疫療法の胸部腫瘍への応用と基礎的メカニズム解明研究

Program Title (English) :Study of the application for thoracic cancers and clarification of the mechanism of Near Infrared Photoimmunotherapy

利用者名(日本語)      :佐藤和秀1),2), 西永侑子2)

Username (English)     :Kazuhide Sato1) ,2), Yuko Nishinaga2) 2)

所属名(日本語)        :1)名古屋大学高等研究院, 2) 名古屋大学大学院医学系研究科病態内呼吸器内科

Affiliation (English)  :1)Institute for Advanced Research, 2)Respiratory Medicine, Nagoya                   University School of Medicine

 

 

1.概要(Summary )

申請者は次世代のがん治療として、がん細胞表面の抗原に特異的な抗体に近赤外線に反応するprobeをつけ、局所的に近赤外線を当てる事で治療を行うNear-Infrared photoimmunothreapy (PIT)を見いだし、肺がんを含めた難治がんの診断や治療に応用するための基礎的な研究を行ってきた。PITにより引き起こされる細胞死の生物学的な基礎メカニズムとそれに続くダイナミックな生理学的変化や、免疫反応を解明し、さらなる臨応用を目指している。本研究は、probe(化学)と抗体(生物学、医学、薬学)を至適条件下でconjugationし薬剤化を行い(conjugation chemistry)、さらに近赤外光線(光学・物理学)を加えた治療法を行う学際的な研究である。革新的なターゲット局所治療として、高い評価を得ており、米国・日本・シンガポールで臨床試験が既に始まっており、数年以内の臨床導出が予定される。

悪性中皮腫は中皮細胞から発生する悪性腫瘍であり、その8割が胸膜から発生する。肺癌に比べて稀であるが、年間死亡数は増加傾向である。悪性胸膜中皮腫の免疫染色における陽性マーカーであるD2-40は、膜貫通型糖蛋白質であるポドプラニンに対する抗体で、このポドプラニンを新たな悪性胸膜中皮腫の治療標的とすることを考えた。抗体医薬として抗ポドプラニン抗体であるNZ-1が開発されており、これをPITの抗体として利用することも加えて検討している。

2.実験(Experimental)

抗ポドプラニン抗体であるNZ-1にIR700をconjugateしてNZ-1-IR700を作製し、ルシフェラーゼを発現するよう遺伝子導入したヒト悪性中皮腫の細胞株であるH2373 (H2373-luc)を用いて、ヌードマウスの皮下腫瘍移植モデル、胸膜播種モデルでin vivoのNIR-PITを実施した。腫瘍体積、腫瘍のルシフェラーゼ発光を評価した。ルシフェラーゼ発光の観察および定量評価には同様にIVIS spectrum CTを用いた。蛍光の観察はPearl imager(LI-COR Biosciences)で行った。

3.結果と考察(Results and Discussion)

IVIS spectrum CTでルシフェラーゼ発光の定量を行い、初回NIR-light照射前の発光との比を比較したところ、照射1日後に有意なルシフェラーゼ発光の低下を認めた。腫瘍体積やルシフェラーゼ発光と同様に初回NIR-light照射前との比で比較したところ、照射2日後から有意な増大抑制を示した(*p<0.05 vs. APC,t-test, n ≧ 3 mice in each group)。

次に、胸膜播種モデルを作製した。IVIS spectrum CTにてルシフェラーゼの発光を評価し、NIR-light照射前との比で比較したところ、NIR-PITによって発光は有意な増加抑制を示した (*p <0.05 vs. control, t-test, n ≧ 3 mice in each group)。

4.その他・特記事項(Others)

なし。

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)

(1) Nishinaga Y, Sato K, Isobe Y, Takahashi K, Taki S, Yasui H, Kaneko M, Kato Y, Hasegawa Y.

Targeting Photo-therapy for Malignant Pleural Mesothelioma; Near Infrared Photoimmunotherapy targeting podoplanin

2019 World Conference on Lung Cancer, 2019/09/08, Barcelona

6.関連特許(Patent)

なし

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