利用報告書
課題番号 :S-19-MS-1066
利用形態 :施設利用
利用課題名(日本語) :近赤外発光材料を志向したハロゲン結合性超分子錯体の構造解明
Program Title (English) :Structural elucidation of halogen-bonded supramolecular complexes intended for near-infrared light-emitting materials
利用者名(日本語) :盛田雅人
Username (English) :M. Morita
所属名(日本語) :京都工芸繊維大学大学院工芸科学研究科
Affiliation (English) :Faculty of Molecular Chemistry and Engineering, Kyoto Institute of Technology
1.概要(Summary )
近赤外光は生体細胞透過性が高く,蛍光イメージングにおいて理想的なイメージング材料となる。しかし,近赤外発光分子は分子内に大きな共役系を有している必要があり,合成が困難であるといった問題点を有している。そこで,ハロゲン結合を介した超分子化を利用することで複雑な合成プロセスを必要とせず,容易に近赤外発光材料が創製できると考えた。まず本年は,ハロゲン結合性超分子錯体形成に利用するモノマー分子の設計及びその物性評価を行なった。
2.実験(Experimental)
測定サンプルは,4-ethynylanisoleとブロモベンゼン誘導体の薗頭クロスカップリングにより合成し,カラムによる精製後,再結晶により再度精製を行なった。
結晶構造の決定には極微小結晶用単結晶X線回折装置 (Rigaku社製,HyPix-AFC) 及び,単結晶X線回折装置 (Rigaku社製,MERCURY CCD-2) を利用した。また,固体発光スペクトル及び蛍光寿命測定には,それぞれ蛍光分光光度計 (HORIBA社製,SPEX Fluorolog 3-21),ピコ秒レーザー (Spectra-Physics,Quantronix社製,Millennia-Tsunami,TITAN-TOPAS) を利用した。
3.結果と考察(Results and Discussion)
フッ素原子を導入していない誘導体1の固体発光効率と比較して,分子短軸方向にフッ素原子を導入した2では,固体発光効率の大きな向上が見られた (Figure 1)。溶液状態ではフッ素原子の有無によって光物性に大きな差はみられなかったことから,固体発光効率の差は1と2の結晶構造の違いに起因したものであると考え,結晶構造解析を行なった (Figure 1)。その結果,分子短軸方向のフッ素原子を介した水素結合によって分子運動を抑制することで固体発光効率が大きく向上することを明らかにした。
Figure 1. fluorination of diphenylacetylene.
4.その他・特記事項(Others)
本研究を遂行するにあたり,単結晶X線回折装置の利用においては分子科学研究所機器センターの岡野芳則 技術職員,藤原基靖 技術職員,また,発光スペクトル測定および蛍光寿命測定においては上田正 技術職員に丁寧に装置使用方法等をご教授いただきましたことを厚く御礼申し上げます。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) 盛田雅人, 山田重之, 今野 勉, 第42回フッ素化学討論会, 講演番号1O05, 2019年11月21日.
(2) M. Morita, S. Yamada, and T. Konno, New Journal of Chemistry, (2020), accepted. (DOI: 10.1039/D0NJ01268H).
6.関連特許(Patent)
なし。