課題番号 ：S-20-MS-1017
利用形態 ：施設利用
利用課題名（日本語） ：遷移金属が置換したポリオキソメタレート錯体の酸化還元反応メカニズムの定量的解析
Program Title (English) ：Detailed analysis of voltammetric behavior of transition metal-substituted polyoxometalate
利用者名（日本語） ：上田忠治1), 東慎也2), 山崎直輝2)
Username (English) ：T. Ueda1), S. Azuma2), S. Azuma2)
所属名（日本語） ：1) 高知大学総合科学系複合領域科学部門, 2) 高知大学大学院総合人間自然科学研究科
Affiliation (English) ：1) Division of Interdisciplinaly Science, Kochi University, 2) Faculty of
Science, Kochi University

１．概要（Summary ）
ポリオキソメタレート錯体(POM)は，触媒化学，分析化学，生化学，材料化学等の広い分野において，活発な研究が進められている非常に興味深い物質の一つである。しかし，POMの電気化学的酸化還元反応メカニズムは，非常に複雑で，長い年月をかけて研究が行われているにも関わらず，不明瞭な部分が数多く残されている。そこで本研究では，遷移金属が置換したPOMの電気化学的酸化還元反応メカニズムに関する定量的な解析を行った。
２．実験（Experimental）
サイクリックボルタンメトリーおよびフーリエ変換交流ボルタンメトリー等の電気化学的手法を駆使して，POM の酸化還元挙動を詳細に調べた。特に，POMの構成原子の違いによる，電気化学的酸化還元反応速度を詳細に調べた。POMの還元体のESRスペクトル(EMX-plus)から，POMの酸化還元活性部位と有機溶媒との相互作用に関する有用な情報を得た。実験結果をを満足するような酸化還元反応メカニズムを基にして，ボルタモグラムのシミュレーションを行い，POMの酸化還元挙動の定量的解析を試みた。
３．結果と考察（Results and Discussion）
　本研究では，ESR測定およびフーリエ変換交流ボルタンメトリー(FT-ACV)を用いて，アセトニトリル，ジメチルスルホキシド(DMSO)およびプロピレンカーボネート(PC)中におけるKeggin型構造のPOMである[SVW11O40]3- (SVW11)，[V(VW11)O40]4- (V(VW11))および[VW12O40]3- (VW12)の不均一電子遷移速度の解析を行い，酸化還元サイトの違いによる電子移動速度の差を定量的に考察した。各POMのFT-ACVを測定し，それぞれのFT-ACボルタモグラムのシミュレーションの結果から，SVW11，V(VW11)およびVW12の電極表面における不均一電子移動速度定数は，それぞれ第１還元に対してはk0 1=0.19, 0.15, 0.19 cm s-1，第2還元に対してはk0 2= 0.13, 0.020, 0.080 cm s-1であることが分かった。VW12の１電子還元した溶液のESRの結果から，移動電子は，室温中においてはVW12の骨格部分のタングステン上で非局在化し，極低温においてのみ中心のバナジウムに局在していることが分かった。つまり，室温では，骨格部分に電子が導入されることから，SVW11と同等の電子移動速度定数が得られたと考えられる。
４．その他・特記事項（Others）
本研究を行うにあたって，モナッシュ大学の Prof. Alan M. Bond, Dr. John F. Boas, Dr. Jie Zhang および Dr. Si-Xuan Guo氏に協力を頂いた。
５．論文・学会発表（Publication/Presentation）
(1) T. Konishi, K. Kodani, T. Hasegawa, S. Ogo, S-X. Guo, J. Boas, J. Zhang, A. M. Bond, T. Ueda, Inorg. Chem., 59, 10522-10531 (2020).
(2) 東慎也，江口洋平，山崎直輝，小河脩平，Si-Xuan Guo，Alan M. Bond，Jie Zhang，上田忠治，2020年日本化学会中国支部大会， 2020年11月29日
６．関連特許（Patent）
なし