利用報告書
課題番号 :S-19-MS-1102
利用形態 :協力研究
利用課題名(日本語) :遷移金属ダイカルコゲナイドの励起エネルギー依存ARPES
Program Title (English) :Photon-energy-dependent ARPES for transition metal dichalcogenides
利用者名(日本語) :田中慎一郎
Username (English) :S. Tanaka
所属名(日本語) :大阪大学産業科学研究所
Affiliation (English) :The institute of scientific and industrial research
1. 概要(Summary )
遷移金属ダイカルコゲナイド(TMDC)は代表的な低次元物質であり、超伝導やCDW(電荷密度波)転移を示すため多くの研究者の注目を集めている。これまでは主としてバルク物性が調べられており、表面物性は不明な点が多い。ここでは、代表的なTMDCであるNbSe2の表面構造の温度依存性を電子回折によって調べた。NbSe2は、X線回折の研究によって30K付近で電荷密度波相転移を起こして低温で3x3超構造を作ることが知られている。
2.実験(Experimental)
分子科学研究所・機器センター・機能性材料バンド構造顕微分析システムを利用した。NbSe2を真空中へき開した表面、さらに、大気中でテープ劈開した良質な表面を真空中で様々な温度で加熱した表面について、低速電子回折(LEED)装置を用いて10Kでの電子回折パタンを調べた。さらに、両方の表面について10K―室温での電子回折パタンの温度依存性を測定した。
3.結果と考察(Results and Discussion)
図1は、大気中劈開したNbSe2試料を1×10-7Pa程度の真空中で930Kに加熱して清浄化した後、Ep=70.1eV、試料温度10Kで観測したLEED像である。きれいな(1x1)パターンが観測されている。図2は、同じ条件で、ただし超構造によるスポットを調べるために強度を対数スケールで示したものである。10Kという、CDW転移温度よりも十分低い温度にもかかわらず、全く超構造が観測されない。様々な試料取り扱い条件や測定温度で調べても、表面での構造転移は観測できなかった。すなわち、表面でのCDW転移温度はバルクよりもずっと低いか、またはLEED測定における電子注入により超構造が破壊されるという興味深い結果が得られた。詳しい機構について議論するには、さらに研究が必要である。
図1:NbSe2のLEEDパターン(観測温度10K)
図2:図1と同じもの(強度が対数表示)
4.その他・特記事項(Others)
なし
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし
6.関連特許(Patent)
なし







