利用報告書
課題番号 :S-19-MS-0056
利用形態 :協力研究
利用課題名(日本語) :配位子保護金属クラスターの磁性に関する研究
Program Title (English) :
利用者名(日本語) :高野慎二郎1),陶山めぐみ1),中村敏和2)
Username (English) :
所属名(日本語) :1) 東大院理, 2) 分子科学研究所
Affiliation (English) :
1.概要(Summary )
配位子で保護された金属クラスター、特に金や銀といった貨幣金属クラスターはその価電子がクラスターコアに非局在化し、離散化した電子準位に収容される。一般的に魔法数として知られる金クラスターは幾何構造と電子構造の双方が閉じることでその特異的な安定性が説明されるが、いくつかのクラスターでは開殻電子構造を取ることも知られている。本研究課題では電子スピン共鳴実験を行い、これら開殻電子系金クラスターの磁気的性質を明らかにすることを目的とし、分子研において実験を行った。
2.実験(Experimental)
不対電子を持つ開殻電子系金クラスター[MAu24(PET)18]– (M = Pd, Pt; PET = 2-phenylethanethiolate)および、[IrAu12(dppe)5Cl2]2+ (dppe = 1,2-Bis(diphenylphosphino)ethane)は東大で多結晶サンプルを調製した。分子研においてBruker E500分光器を利用して、Xバンド電子スピン共鳴実験を遂行した。クラスターは多結晶状態のサンプルと、ジクロロメタン溶液を急速凍結して調製した凍結溶液サンプルの両方を測定した。液体Heを利用し、フロー型クライオスタットによってサンプル温度を4 Kから100 K程度まで制御してESRスペクトルの温度依存性を測定した。測定データの解析はMatLab上でEasySpinプログラムを利用して行った。
3.結果と考察(Results and Discussion)
以前のESR測定において、[MAu24(PET)18]–の多結晶サンプルが奇妙なESRスペクトルを示す端緒を得ていたので、結晶中におけるスピン間の磁気双極子相互作用を疑い、同形の非磁性クラスター結晶中に磁気的希釈したサンプルをいくつかの希釈濃度で調製し、その多結晶スペクトルを4 Kで測定したが、以前の測定結果を再現しなかった。種々の測定結果から考察した所、以前の測定では調製した多結晶サンプルの粒度が等方性を担保するには不十分であり、多結晶の異方性が非常に複雑なスペクトル形状を生み出していたと結論した。
一般的にホスフィンによって保護された金クラスターは非常に大きな酸化還元ポテンシャルを持ち、酸化体、還元体の両方ともが不安定になるため、可逆な酸化還元反応を示す系はほとんど例がない。我々は中心にIrをドープした閉殻電子系[IrAu12(dppe)5Cl2]+クラスターを新規に合成し構造決定した。中心のIr原子は非局在化した電子に対する引力ポテンシャルを低下させ、酸化ポテンシャルを上昇させるのではないかという仮定の元酸化条件にさらした所、果たして酸化体である[IrAu12(dppe)5Cl2]2+を選択的に得ることができた。ESRスペクトルの測定により、その電子状態は確かに開殻系の電子状態であり、常磁性であることが確かめられた。これらの結果を踏まえ、その酸化還元特性とドープ効果を議論した論文を投稿中である。
4.その他・特記事項(Others)
なし
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし
6.関連特許(Patent)
なし







