利用報告書

酵素反応による部位特異的な抗体脂質化
高原 茉莉
北九州工業高等専門学校

課題番号 :S-20-KU-0015
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :酵素反応による部位特異的な抗体脂質化
Program Title (English) :Site-specific lipidation if antibodies in an enzymatic manner
利用者名(日本語) :高原 茉莉
Username (English) :M. Takahara
所属名(日本語) :北九州工業高等専門学校
Affiliation (English) :National Institute of technology, Kitakyushu Colleage.

1.概要(Summary )
抗体-薬物複合体 (ADC) は、抗体を薬物送達部位として、強力な疎水性薬物をがん細胞にのみ送達可能な副作用を最小限とした抗がん剤として注目される。しかし、現在のADCは、不均一な疎水性薬物と抗体の複合化による抗体の変性が課題である。そこで本研究では、微生物由来トランスグルタミナーゼ (MTG) を用いた部位特異的タンパク質脂質化技術に着目した。抗体への疎水性化合物修飾のモデルとして、脂質部位を本研究では選択した。MTGは特定のグルタミン (Q) とリジン (K) 側鎖間を架橋する酵素で、抗体に天然で存在する特定のグルタミン (Q295) を認識する。1そのため、遺伝子組換えなしで抗体に対する脂質修飾サイトを制御し、抗体の失活を最小限にする点を特色とする。このように優れたMTG反応を脂質化抗体の合成に応用するため、MTGが認識する配列 (RHK)、リンカー配列 (PEG2)、脂質部位 (C16, C18, Chol) を組み合わせた、両親媒性のペプチド基質 (脂質-PEG2-RHK) を設計した (図1)。本課題においては、脂質化ペプチドを質量分析装置、脂質化ペプチドのMTG反応性をHPLCで解析するため、機器利用した。
2.実験(Experimental)
MALDI-TOF質量分析装置により、合成した脂質化ペプチドの同定を行った。マトリックスはα-CHCAを用いた。超高速HPLC分離・分子構造分析システムによりMTG反応による脂質化ペプチドと抗体の複合化率・複合化数の定量を行った。用いたカラムはサイズ排除カラムとした。

3.結果と考察(Results and Discussion)
MALDI-TOF質量分析では、合成した脂質化ペプチドが全て理論値を示したため、合成の同定を確認した。HPLCによる解析では、サンプル濃度が少量だったため、UVで検出ができず、脂質化ペプチドと抗体の複合化率を同定できなかった。そのため、今後はより少量で検出できるマイクロカラムを用いての解析を予定している。

4.その他・特記事項(Others)
(参考文献1) S. Jeger, K. Zimmermann, A. Blanc, J. Grünberg, M. Honer, P. Hunziker, H. Struthers, R. Schibli, Angew. Chem. Int. Ed., 49, 9995-9997 (2010).

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) M. Takahara, S. Mochizuki, R. Wakabayashi, K. Minamihata, M. Goto, K. Sakurai, N. Kamiya, Bioconjug. Chem., Accepted (2021).
(2) 高原 茉莉, 若林 里衣, 後藤 雅宏, 神谷 典穂, 第30回日本MRS年次大会, 令和2年12月10日.

6.関連特許(Patent)
なし。

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