利用報告書

酸化物ナノシート壁を有する三次元構造体の物性評価
佐藤史彬, 鈴木大介, 才田隆広
名城大学理工学部応用化学科

課題番号 :S-16-MS-1028
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :酸化物ナノシート壁を有する三次元構造体の物性評価
Program Title (English) :Characterization of three-dimensional structure formed by the oxide nanosheets
利用者名(日本語) :佐藤史彬, 鈴木大介, 才田隆広
Username (English) :F. Sato, D. Suzuki, T. Saida
所属名(日本語) :名城大学理工学部応用化学科
Affiliation (English) :Department of Applied Chemistry, Faculty of Science and Technology, Meijo University

1.概要(Summary )
粘土鉱物に代表されるような層状化合物を層はく離することで得られる酸化物ナノシートは,厚さがnmサイズかつ二次元的な広がりがmオーダーと高いアスペクト比を有する。この酸化物ナノシートは,通常のバルク体とは異なり,内部より表面が締める割合が多い。このため,バルク状結晶の酸化物とは異なる特異な物性を示す。
現在,酸化物ナノシートの種類として粘土鉱物系,Ti系,Nb系,Ta系,Mn系,Mo系,Ru系,Ir系およびグラフェンオキサイドが報告されている。主に中心金属元素の違いにより,強磁性体,半導体,導電体など酸化物ナノシートの物性に違いが現れる。一方で,構成元素種に依らず,共通する特徴としては,酸化物ナノシートが負電荷を有していること,コロイド分散液として得られることが挙げられる。この共通した2つの特徴から,交互積層法やラングミュア・プロジェット法により単分子膜の作製が可能となる。特に交互積層法は,平板の基板だけでなく球体などの三次元構造体にも適用することが可能である。実際に我々も張子細工の様にグラフェンオキサイドを球状高分子に積層させた球状構造体の作製に成功している1。
本研究では,酸化物ナノシートと機能性分子の複合体をコロイド分散溶液として得ることを第一段階の到達目的とし,その後に球状高分子上への積層を試みた。
2.実験(Experimental)
本研究では,対象の酸化物ナノシートとしてH2Ti4O9から誘導される酸化チタンナノシート(TiO2ns)に着目した。また,TiO2nsと複合化を行なう機能性分子としてクラウンエーテル系化合物を選択した。形態観察を低真空分析走査電子顕微鏡およびAFMにより行い,イオン認識能を顕微ラマン分光装置およびXPSにより確認した。
3.結果と考察(Results and Discussion)
通常,TiO2nsと有機分子などの複合体を合成する際には,必ずTiO2nsコロイド溶液を使用する。しかし,本研究では,層はく離前のH2Ti2O9とクラウンーテル系化合物を直接反応させることにより,TiO2nsとクラウンエーテル系化合物の複合化に成功した。更に,得られた複合体ナノシートがアルカリ金属イオンを認識することも確認した。
4.その他・特記事項(Others)
参考文献
(1) T. Saida, T. Kogiso, T. Maruyama, Chem. Lett., 45, 2016, 330-332.
謝辞
本研究を推進するにあたりラマン分光装置を使用させて下さいました分子科学研究所 賣市幹大技官に深く感謝いたします。また,査型電子顕微鏡を使用させて下さいました分子科学研究所 中尾聡技官に深く感謝致します。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) 佐藤 史彬, 才田 隆広, 第6回名古屋大学シンクロトロン光研究センター シンポジウム, 平成29年3月2日.
(2) 鈴木大介,才田隆広, 日本セラミックス協会 2017年年会, 平成29年3月19日.
6.関連特許(Patent)
なし。

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