利用報告書
課題番号 :S-16-MS-1080
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :酸化物固体電解質の磁気的性質
Program Title (English) :Magnetic properties of solid oxide electrolytes
利用者名(日本語) :高見剛1)
Username (English) :T. Takami1)
所属名(日本語) :1) 京都大学 先端イノベーション拠点施設
Affiliation (English) :1) Center for Advanced Science & Innovation, Kyoto University
1.概要(Summary )
リチウム二次電池には有機系電解液が主として用いられているが、安全性や環境への影響が危惧される。一方、この電解液をリチウム伝導種とする固体電解質、特に酸化物で代替することができれば、これらの問題点を克服できる可能性が高いことに加え、液漏れや短絡の可能性も低く、固体であるため設計の自由度が増すなど全固体電池の実現に向けて優位点がある。
優れた酸化物固体電解質の条件として、電子伝導が小さく、イオン伝導が大きいことが挙げられる。電子伝導の抑制の効果を明らかにしイオン伝導を高めるためには、電子数(価数)に加え、軌道への電子の配置の仕方(スピン状態)も調べる必要がある。そこで本研究では、自らが見出した比較的高いリチウムイオン伝導を示すd電子系の酸化物固体電解質を対象に磁化を測定し、遷移金属元素の価数とスピン状態を決定した。
2.実験(Experimental)
MPMS-7(Quantum Design社製)を用いて、酸化物固体電解質の磁化を測定した。粉末試料をカプセルあるいは石英管に封止して、2-300 K, 100 Oeでゼロ磁場冷却(ZFC)と磁場中冷却(FC)過程で測定を実施した。
3.結果と考察(Results and Discussion)
Li量を系統的に変化させたLa-Li-Co-Oの磁化率の温度依存性を図1に示す。縦軸は対数スケールであり、いずれの試料も小さな磁化率であることが確認できる。また、ZFCとFCの磁化率の振る舞いはほぼ同じであり、磁気秩序も観測されていない。キュリー・ワイス則に従い磁気モーメントを評価した結果、磁気モーメントは極めて小さくスピン量子数S = 0のバンド絶縁体の条件を満たしていることがわかった。すなわち、コバルトイオンが3価の低スピン状態であることを明らかにした。
4.その他・特記事項(Others)
技術支援に関して伊木志成子氏に大変お世話になり、ここに厚く御礼申し上げます。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) 高見剛, 森田善幸, 福永俊晴, 松原英一郎, 第64回応用物理学会春季学術講演会, 平成29年3月15日.
6.関連特許(Patent)
なし。







