利用報告書
課題番号 :S-16-KU-0031
利用形態 :技術代行
利用課題名(日本語) :酸化物担持カーボンナノチューブの構造解析
Program Title (English) :Structural analysis of oxide loaded on carbon nanotube
利用者名(日本語) :松本 広重
Username (English) :H. Matsumoto
所属名(日本語) :九州大学カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所
Affiliation (English) :International Institute for Carbon-Neutral Energy Research,
Kyushu University
1.概要(Summary )
水電解は太陽電池、風力発電などの持続可能エネルギーから発電した電力を用いて、水素を生成するプロセスであり、水素をエネルギーキャリアとして用いる低炭素社会を構築する重要な一環である。水電解装置に対して、固体高分子形水電解セル (PEMWE) は高動作電流密度、高純度水素作製出来るため、次世代水素製造装置として期待されている。低コスト化を実現するために、アノード酸素発生反応 (Oxygen evolution reaction (OER), 2H2O→4H++ O2+4e-,Eθ =1.23 V) の貴金属触媒酸化イリジウム (IrOx) の使用量の低減が望まれている。そこで近年担持体であるカーボンブラック (CB)のような導電性炭素やTiO2、SnO2のような半導体酸化物に低粒径のIrOxを固定化することで、使用量の低減が可能である。しかし水電解アノードは高電位(>1.23 V vs. NHE)であるために、sp3炭素からなるCBは容易に酸化溶解し、耐久性が低いのが問題である (C + 2H2O → CO2 + 4H+ +4e-, 0.207 V vs. NHE)。一方、半導体酸化物は酸化溶解の問題は回避できるが、導電性が低いことが問題である。そこでこれらの問題を解決するために、より導電性が良い、電気化学的上安定なsp2炭素からなる多層カーボンナノチューブ (MWNT) の使用を検討した。
2.実験(Experimental)
電子状態測定システム(島津製作所社製・AXIS-ULTRA)によりイリジウム酸化状態の同定を、またナノ粒子の構造を超高分解能走査電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ社製・SU9000)により観察を行った
3.結果と考察(Results and Discussion)
図1.電気化学酸化前後のXPSスペクトル
MWNTに担持したIrナノ粒子に対し、電気化学酸化処理を施しX線光電子分光(XPS)によりIrの酸化状態の同定を行った。その結果、電気化学酸化前に置いて86%あったIr(0)は電気化学酸化後において65%まで減少していた。電気化学酸化は進行していたが完全に0価が失われていなかったことから、コアの部分は酸化されず表面のみが酸化されたと考察できる。
今後本触媒を用いて独自の水電解セルを用い水電解実験に取り掛かる。
4.その他・特記事項(Others)
XPS測定、SEM測定はナノテクプラットフォームの柿田有理子氏および城戸秀作氏に実施頂いた。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし。
6.関連特許(Patent)
なし。







