利用報告書
課題番号 :S-16-NM-0112
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :金ナノアンテナ構造を利用した生体試料の表面増強ラマン散乱測定
Program Title (English) :Gold nano-antenna structures for surface-enhanced Raman scattering
of biological materials
利用者名(日本語) :横川雅俊
Username (English) :Masatoshi Yokokawa
所属名(日本語) :筑波大学数理物質系
Affiliation (English) :Graduate school of Pure and Applied Sciences, University of Tsukuba
1.概要(Summary)
バイオフィルム(BF)は、表面に付着した微生物が共同体として特徴的な構造を形成したもので、その内部において浮遊細胞とは全く異なる細胞挙動を示す。近年、医療・産業分野での重要性から、BFの科学的解明が期待されている。現在我々は、BF内部の物質動態および細胞代謝活性の時空間的解析を目的に、微小流体デバイスとライトシート顕微鏡、そして表面増強ラマン散乱技術の統合を試みている。本研究ではその基盤技術として、微生物の生命活動に起因する安定同位元素の取り込みを利用したラマン標識、金ナノ粒子を利用した表面増強ラマン散乱測定および細胞活性の評価を行った。
2.実験(Experimental)
【利用した主な装置】
高速レーザーラマン顕微鏡
【実験方法】
大腸菌野生株を0~50%重水(D2O)を含む液体LB培地中で一晩振とう培養したものを適量スライドガラス上に滴下し、カバーガラスをのせマニキュアで密閉することでプレパラートを作成した。生きた微生物の空間分解ラマンスペクトルの取得には、高速レーザーラマン顕微鏡を用い、励起レーザー波長532 nm、100倍対物レンズ下で測定を行った。また、表面増強ラマン散乱測定においては、培地中に一定量の金ナノロッドを加え、同様の手順で培養・調整したものを試料とした。測定は、波長785 nmのCO2レーザーを用いて行った。
3.結果と考察 (Results and Discussion)
Fig. 1に、10%重水存在下で培養された大腸菌から得られたラマンスペクトルを示す。通常、1,800-2,800 cm-1の波数域においては、タンパク質や脂質など細胞内の分子によるラマン散乱がほとんど観察されない(サイレント領域)とされるが、Fig. 1では2,150 cm-1付近にブロードなラマンバンドが観察された。また、その強度は、培地中の重水濃度に依存して増大することから、これは微生物の生命活動の過程で重水素原子が分子内に取り込まれ、新たにC-D結合が形成されたことに起因すると考えられる。
一方、表面増強ラマン散乱測定においては、同バンドに対し顕著なシグナル増強はみられなかった。今後は、金ナノロッドと測定対象との物理的距離や、表面増強ラマン散乱の増強度の波長依存性などを検討していく。
Fig. 1 Raman spectrum of a single E. coli cell grown in media with heavy water
4.その他・特記事項(Others)
競争的資金: 基盤研究(C)
他に利用した支援機関: ①基礎生物学研究所・先端バイオイメージング支援プラットフォーム ②京都大学・微細加工ナノプラットフォームコンソーシアム
支援機関からの支援内容: 装置の使用トレーニングを受けた
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) 島宗悠太朗et al., 微小流体デバイスとライトシート蛍光顕微鏡の統合. 第73回日本顕微鏡学会学術講演会(2017)
6.関連特許(Patent)
なし







