利用報告書

金ナノアンテナ構造を利用した表面増強ラマン散乱
横川雅俊1), 鈴木駿介2)
筑波大学大学院数理物質系

課題番号 :S-15-NM-0073
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :金ナノアンテナ構造を利用した表面増強ラマン散乱
Program Title (English) :Gold nano-antenna structures for surface-enhanced Raman scattering
利用者名(日本語) :横川雅俊1), 鈴木駿介2)
Username (English) :Masatoshi Yokokawa1), Shunsuke Suzuki2)
所属名(日本語) :筑波大学大学院数理物質系
Affiliation (English) : Graduate school of Pure and Applied Sciences, University of Tsukuba

1.概要(Summary )
現在、蛍光技術は、イムノアッセイ、核酸検出、臨床検査など幅広い分野・用途で活用されている。しかし、有機蛍光色素あるいは生体由来蛍光物質においてはその蛍光強度の低さが、量子ドットでは生体毒性が利用における課題となる。これに対し、金属特有の光学現象である表面プラズモン共鳴による電場制御・増強効果を適用することが出来れば、光の吸収効率を劇的に高め、微弱な励起光でも強い蛍光を発する蛍光素子の創製が可能となる。また、同原理を表面増強ラマン散乱(SERS)に適用することで、蛍光標識なしでの分子認識も可能となる。本研究では、その基盤技術として金ナノロッド(GNR)の配列及び配向を制御したナノアンテナ構造を構築し、ギャップ部に任意の物質を挟み込むことで増強電場を利用した高輝度蛍光素子及びSERSタグの開発を試みた。

2.実験(Experimental)
【利用した主な装置】 高速レーザーラマン顕微鏡
まず、界面活性剤水溶液中で金ナノ粒子を成長させるシード法によりGNRを合成した。続いて、合成されたGNRの結晶構造異方性を利用し、構造両端部のみを選択的にチオール化DNAで修飾した。配列・配向を制御したナノアンテナ構造を得るため、ポリスチレンビーズを支持担体とし、DNAハイブリダイゼーションにより固相表面から逐次的にGNRを伸長させた。最後に、合成されたGNR鎖を支持担体から分離し、任意の配列・配向を備えたGNRナノアンテナ構造を得た。合成したGNRの光学特性は、蛍光顕微鏡と高速レーザーラマン顕微鏡を用いて評価した。ラマン分光においては、波長785 nm、出力0.2 mWのレーザーを用い、100倍対物レンズ下で測定を行った。
3.結果と考察(Results and Discussion)
GNR・金ナノアンテナ構造を用いてラマン散乱の測定を行った。600-800 cm-1 辺りにDNAのもつ六員環による振動モードだと考えられるピークシグナルが検出された。また、ナノアンテナ構造からは、GNR単体と比して10倍以上強いシグナルが検出され、本構造の有用性が示された。
4.その他・特記事項(Others)
なし。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし。
6.関連特許(Patent)
なし。

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