利用報告書

金属ナノクラスターの表面原子列の解明
紅谷 篤史, 東 相吾
株式会社 豊田中央研究所

課題番号                :S-19-NI-0034

利用形態                :技術代行

利用課題名(日本語)    :金属ナノクラスターの表面原子列の解明

Program Title (English) :Elucidation of atomic arrangement on metal nanocluster surfaces

利用者名(日本語)      :紅谷 篤史, 東 相吾

Username (English)     :A. Beniya, S. Higashi

所属名(日本語)        :株式会社 豊田中央研究所

Affiliation (English)  :Toyota Central R&D Laboratories, Inc.

 

 

1.概要(Summary )

水素のエネルギー材料としての利用が始まる中、化石燃料を利用しない、低コストかつ高効率な大規模水素生産システムが求められている。高分子膜型電解システム(PEMEC: Proton Exchange Membrane Electrolysis Cells)は水を電気分解するシステムの一つであり、実用化実績のあるアルカリ電解システムの多くの弱点を原理上克服できる可能性があるだけでなく、高圧の水素(<2 MPa)を直接取り出すことができるなどの特徴があることから、水素製造の有力な候補の一つとされている。

いずれのシステムも水を電気化学的に分解することで水素と酸素を得るが、その分解に要する電圧は、熱力学的に見積もられる室温での理論電圧、1.23 Vに対して大きな値となる。そこで通常、触媒材料を電極上に塗布して利用することで、過電圧を下げる試みがなされる。しかし、PEMECではこのコア材料であるプロトン伝導性高分子膜がスルフォン酸基を表面に有しているため、これまでアルカリ電解システムにおける触媒材料として利用可能であった高効率低コストなニッケル、コバルト、鉄などの遷移金属の触媒としての利用を制限してきた。結果として、酸に耐えうる貴金属、例えば白金が水素生成反応(HER : Hydrogen Evolution Reaction)を進めるための電極上に、酸化イリジウム(IrO2)が、全体反応の律速となっている酸素発生反応(OER: Oxygen Evolution Reaction)のための電極の表面に塗工され、触媒として用いられている[1]。なお、HER過電圧(可逆水素電極:Rreversible Hydrogen Electrode (RHE)の電位からのずれ)は触媒として白金を用いることで、例えば10 mAcm-2 に到達するに必要な過電圧は数10 mVのレベルに既に到達しているが、OER過電圧(RHE から1.23 Vの電位を0 Vとしたそこからの電位のずれ)はHER過電圧と比較して300~500 mV以上と一桁高い。

本共同利用ではOER触媒として重要なIrO2、及びその他の元素種で作製したナノ材料について透過電子顕微鏡(TEM)観察を行い、触媒反応の起こるナノ粒子表面の構造を原子レベルで観察可能である事が確認できた。

 

2.実験(Experimental)

IrO2、及びその他の元素種で作製したナノ材料について原子分解能分析電子顕微鏡 (JEM-ARM200F)を用い観察した。

 

3.結果と考察(Results and Discussion)

条件を変えて作製したナノ材料のTEM観察を行い、IrO2ナノ粒子だけでなく、その他の材料からなるナノ粒子についてもTEM観察が可能である事を確認できた。

 

4.その他・特記事項(Others)

謝辞: TEM観察および画像解析に関するコメントを頂いた名古屋工業大学 浅香透先生に感謝いたします。

参考文献: [1] Kibsgaard J, Chorkendorff I. Considerations for the scaling-up of water splitting catalysts. Nature Energy 4, 430-433 (2019).

 

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)

なし。

 

6.関連特許(Patent)

なし。

 

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