利用報告書
課題番号 :S-18-NM-0074
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :金属ナノ粒子の分光学的利用
Program Title (English) :
利用者名(日本語) :二又 正之1)
Username (English) :
所属名(日本語) :1) 埼玉大学大学院理工学研究科
Affiliation (English) :
1.概要(Summary)
我々は、金ナノ粒子(AuNP), 銀ナノ粒子(AgNP)を用いて溶液中の化学種の高感度ラマン分光分析を行っている。特にAuNPは生体分子との親和性が高く、低侵襲性であり、生体系への適用が進められている。我々は、生体系でのセンシングを目指して、クエン酸還元法で形成したAgNPやAuNPを、目的分子の吸着を利用して、近接させ、可視領域のレーザ光を用いて、局在表面プラズモンをカップルさせ、カチオン性色素、各種チオール、DNA-RNA塩基など種々の目的化学種のラマン信号強度を108-1010倍増強することに成功した。ここで用いるAuNPやAgNP表面に残留したクエン酸は、粒子の孤立分散性を数か月もの長期間維持するため、安定して利用できる。一方で、クエン酸はカルボキシレートイオンで静電的に金属ナノ粒子に吸着するため、配位結合等で弱く吸着する有機分子、例えばDNA塩基は、高い被覆率を得られず、ラマン信号強度も十分強くはない。また、チオール分子や塩化物イオンは、AgNP表面のクエン酸を完全に置換除去できると考えられていたが、それに関し定量的な解析は行われていない。そこで、クエン酸の吸着状態や、ほかの化学種の吸着に対する影響を明らか異にする必要がある。今年度は、AgNP, AuNP表面のクエン酸残留物のDNA塩基や塩化物置換性等を調べた。
2.実験(Experimental)
【利用した主な装置】 ゼータ電位測定装置
【実験方法】化学還元法で形成したAgNP, AuNP分散水溶液のpH調整や塩化物添加、PMBA, DNA塩基添加を行い、金属ナノ粒子表面残留物であるクエン酸の置換吸着のしやすさ、上記化学種の吸着性をゼータ電位測定により分析した。大学での可視分光、振動分光測定、XPSなどを併用して、AgNP, AuNP表面残留物であるクエン酸の、幅広い化学種の吸着挙動への寄与を解析する。
3.結果と考察 (Results and Discussion)
ゼータ電位測定に基づく解析により、以下の点が明らかになった。
(1) As-prepared AuNPのゼータ電位のpH依存性から、中性pH(~7)では、クエン酸は完全に解離して三価のアニオンとして存在し、酸性pH(<3)では、クエン酸1分子あたりおよそ1個のカルボキシル基にプロトン付加している。酸性でも中性でも数mMまでの塩化物添加では、クエン酸は塩化物置換できない。中性pHでは、DNA塩基が部分的にAuNP表面のクエン酸を置換し吸着する。酸性pHでは、クエン酸吸着してない空きサイトにDNA塩基が吸着する。酸性pHでの吸着量は、中性pHよりも少ない。
(2) AgNP系では、AuNP系に比べて、塩化物やチオール分子によるクエン酸の置換が効率的に起きる。
(3) ゼータ電位等のpH依存性から、クエン酸還元法により合成したAuNPに比べて、ソリューションプラズマ法によるAuNPでは塩化物置換(追加吸着)が起こりやすいこと、及びAgNPでは、酸性pHでDNA塩基を添加しない場合も、低いイオン強度で凝集しやすいことが判明した。
今年度は1回の測定しか行わなかったが、以上の報告を支持する結果が得られた(こうした場合にも報告書の提出を義務付けるのは、やや規則にとらわれすぎていると感じた。我々は規則を守ることを目的として、装置を使用しているのではない)。
4.その他・特記事項(Others)
装置も非常に使用しやすい環境にあり、研究推進に有用であった。今後も継続使用を希望する。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし
6.関連特許(Patent) なし







