利用報告書
課題番号 :S-17-MS-1073
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :金属酵素モデル錯体の電子構造の研究
Program Title (English) :Study on the electronic structure of metalloenzyme model complexes
利用者名(日本語) :藤井 浩、難波照代、石水友梨、西川佳那
Username (English) :Hiroshi Fujii, Teruyo Namba,Yuri Ishimizu, Kana Nishikawa, Haruka Muto
所属名(日本語) :奈良女子大学
Affiliation (English) :Nara Women’s University.
1.概要(Summary )
生体内の金属酵素は、反応中に様々なスピン状態をとりながら機能していることが明らかとなっている。これらの電子構造や反応性を分子レベルで解明することは、酵素の機能がいかにして発現しているかを解明するためには欠かすことができない情報である。本申請者は、これまで酵素反応中間体をそれらと類似するモデル錯体を合成し、その電子構造、反応性を研究し酵素反応との関わりを解明してきた。これらの研究を推進する上で、磁気共鳴法(EPR,NMR)や磁化率測定は電子構造に関してたいへん有用な情報を与える。本課題では、分子科学研究所のEPR装置を用いて、酵素反応中間体の電子構造を精密に解析することを行った。
2.実験(Experimental)
分子科学研究所機器センターにおいてモデル錯体のEPR測定を行った。Bruker EMS Plusを用いて測定した。EPRサンプルは、測定直前に分子科学研究所において調製した。液体ヘリウムを用いて、4KにおけるEPRスペクトルを測定した。
3.結果と考察(Results and Discussion)
(1)鉄4価オキソ錯体の不均化反応をEPRを用いて研究した。−60度において、鉄4価オキソ錯体のジクロロメタン溶液に酢酸を添加すると、溶液は赤色から褐色に変化した。この過程をEPRで追跡した。酢酸を添加する前のEPRスペクトルは、g=6付近に小さなシグナルが観測された。鉄4価オキソ錯体は、EPRサイレントであるため、このシグナルは分解物あるいは不均化によるものと考えられた。酢酸を添加後のスペクトルは、g=6,g=4.5,g=3.5、g=2付近にシグナルが観測された。これらのシグナルは、鉄4価オキソ錯体が不均化した場合に観測できるシグナルであり、不均化を示す実験結果が得られた。
(2)鉄3価ポルフィリンヘキサフルオロアンチモン錯体のEPRを測定した。固体状態の測定を4Kで行った。その結果、g=6付近とg=4付近にシグナルが観測された。これらの結果は、ヘキサフルオロアンチモン錯体が高スピン状態と中間スピン状態の錯体が共存することを示した。
4.その他・特記事項(Others)
なし
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) Ikuko Araki, Kaoru Fukui, and Hiroshi Fujii
Inorg. Chem. 2018, 57, 1685-1688.
(2)西川 佳那、本田 裕樹、藤井 浩
日本化学会第98回春期年会、平成30年3月22日
(3)岡田 沙樹、本田 裕樹、藤井 浩
日本化学会第98回春期年会、平成30年3月22日
(4) 福井 奈美、藤井 浩
第50回酸化反応討論会、平成29年11月11日
(5)今仲庸介、藤井 浩
第50回酸化反応討論会、平成29年11月11日
6.関連特許(Patent)
なし