利用報告書

鉄系酸化物の磁化測定
木全 祐介, 浅香 透
名古屋工業大学大学院工学研究科

課題番号 :S-15-NI-37
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :鉄系酸化物の磁化測定
Program Title (English) :Magnetic measurements of the ferrites
利用者名(日本語) :木全 祐介, 浅香 透
Username (English) :Y. Kimata, T. Asaka
所属名(日本語) :名古屋工業大学大学院工学研究科
Affiliation (English) :Nagoya Institute of Technology

1.概要(Summary )
マルチフェロイック材料をはじめとする(巨大)電気磁気効果を示す物質群は磁性と電気的性質が強く結合し、物性を発現する。応用の観点からは、多くの物質が電気磁気効果の発現に低温、強磁場を要するため、実用化は困難であるとされてきた。そのような中、最近、Z型六方晶フェライトにおいて室温かつ弱磁場中での電気磁気効果が発見され、注目を集めている[1]。 六方晶フェライトは単位構造ブロックの積層様式の違いで整理され6種類の型に分類されるが、このうち、X型に関しては電気磁気効果の有無に加え、その磁気的基礎物性などについても未だ明らかになっていない。そこで、本研究ではX型六方晶フェライトの磁気異方性など電気磁気効果に関連した磁気的性質について磁化測定により調べた。また、磁化測定の結果を、別に行ったローレンツ電子顕微鏡法による磁区構造観察の結果と併せて評価することで、X型六方晶フェライトの磁気的性質の詳細を明らかにすることを目的とした。

2.実験(Experimental)
 フラックス法により育成したX型六方晶フェライト(Sr2Co2Fe28O46)の単結晶試料と固相反応法により合成した多結晶試料を対象に振動試料型磁束計(VSM)(東英工業(株)社製 VSM-5)を用いて、磁化の温度依存性と磁場依存性を測定することで磁気的性質を評価した。

3.結果と考察(Results and Discussion)
 磁化の磁場依存性より本系は室温で自発磁化をもつことが分かった。自発磁化をもつことより、ローレンツ電子顕微鏡により磁区観察を行うと、容易磁化方向はab面内にほぼ平行であることが分かった。
さらに、磁化の温度依存性を測定すると、室温からの昇温で、~350 Kまでは磁化が上昇し、それ以上の温度では磁化は緩やかに減少した。~750 K以上で磁化が急激に減少し、常磁性へ転移したことを確認した(図1)。ローレンツ電子顕微鏡による磁区の高温その場観察の結果、室温からの昇温により、容易磁化方向がab面内からc軸方向へ回転し、高温ではc軸と平行となることが分かった。これはスピン再配列転移を表している。
図1 多結晶X型六方晶フェライトの磁化の温度依存性

4.その他・特記事項(Others)
【参考文献】 [1] Y. Kitagawa, et al., Nature Mater. 9, 797 (2010).
【謝辞】 VSM装置の使用方法を懇切丁寧にご指導くださいました日原岳彦教授に感謝申し上げます。

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) 木全 祐介,岡部 桃子,浅香 透,福田 功一郎, 日本顕微鏡学会第71回学術講演会, 平成27年5月13日.
(2) Y. Kimata, M. Okabe, T. Asaka, and K. Fukuda, The 2nd East-Asia Microscopy Conference, 平成27年11月24日.

6.関連特許(Patent)
なし。

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