利用報告書

電子移動を加速する外膜多核ヘム複合体の酸化還元構造特性
チノタイクル パンチラ
東京大学大学院工学系研究科応用化学専攻

課題番号 :S-16-NM-0024
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :電子移動を加速する外膜多核ヘム複合体の酸化還元構造特性
Program Title (English) :Redox-dependency of multi-heme cytochrome structure enhancing the rate of electron transport
利用者名(日本語) :チノタイクル パンチラ
Username (English) :Chinotaikul Punthira
所属名(日本語) :東京大学大学院工学系研究科応用化学専攻
Affiliation (English) :Department of Applied Chemistry, School of Engineering, The University of Tokyo

1.概要(Summary)

細胞外電子移動(EET)とは、鉄還元菌などの細菌が代謝生成した電子を細胞外の固体物質に伝達する過程を指す。EET速度論の理解・制御を目的として細菌であるShewanella oneidensis MR-1株がモデルとして使われた研究が盛んになっている。
MR-1株のEETにおいて律速となるのは、10個のヘム中心を有する外膜シトクロムMtrCから細胞外固体への電子伝達であり、この過程はフラビン補酵素が外膜シトクロムMtrCと結合することで大きく加速されることが知られている。
このようなMtrCの持つ動的な速度論制御機構に迫るため、近年酸化体の結晶構造に基づいた詳細な解析が始まっている。しかし、in vivo条件においてはMtrCへの電子供給は細胞外電子伝達よりも速いため、MtrCは電子が局在している状態(還元体)となり、酸化体とは異なる構造を有している可能性がある。
そこで、本研究では還元体MtrCの電子伝達に関わるヘム周辺環境を近紫外円偏光二色性(Circular Dichroism: CD)を解析した。

2.実験(Experimental)

【利用した主な装置】
 円二色分散計(CD)

【実験方法】
微生物(シワネラ)細胞懸濁液を濃縮し、測定を行う。

3.結果と考察 (Results and Discussion)

NIMS分子・物質合成プラットフォームの円二色分散計は3回使用させていただいた。初回使用時には、装置の使用トレーニングを受け、トラブルへの対応もしていただいた。 シワネラ細胞の測定を行うと、410nm付近にピークが観測された(図)。シワネラは細胞表面にシトクロムcを多量に有することが知られていることから、それらシトクロムc由来のピークであることが推定される。

図. 細胞懸濁液の円二色性スペクトル。

4.その他・特記事項(Others)
なし。

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし。

6.関連特許(Patent)
なし。

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