利用報告書
課題番号 :S-17-JI-0050
利用形態 :装置利用
利用課題名(日本語) :電極用フェライト系酸化物ナノ粒子の構造と磁気特性
Program Title (English) :Structure and Magnetization of Ferrite Nanoparticles.
利用者名(日本語) :原田雅史
Username (English) :M. Harada
所属名(日本語) :奈良女子大学生活環境学部
Affiliation (English) :Nara Women’s University
1.概要(Summary )
磁性ナノ粒子は、次世代のデバイスに利用される電極材料や磁気材料として注目され盛んに研究が行われている。磁性粒子(マグネタイトやフェライトに代表される金属酸化物系の磁性体)がナノサイズ化すると、そのサイズや粒子の表面等の影響から磁気特性が変化すると考えられているからである。混合フェライトナノ粒子は混合する金属元素の組み合わせにより、多様な磁気特性が発現するとされており、その要因の一つにスピネル構造内での各金属イオンの配置の仕方の違いが考えられる。そこで本研究では、混合フェライトナノ粒子を合成し、構造解析を行うとともに磁化を測定して混合フェライトナノ粒子の磁気特性を評価した。
2.実験(Experimental)
オレイルアミン(OAm)、オレイン酸(OA)、トリオクチルホスフィンオキシド(TOPO)が溶解した1-ドデカノール溶液に出発原料の金属錯体(アセチルアセトナート塩)を添加後、マイクロ波を60分間照射して、溶媒の沸点近傍(250℃)で複合酸化物ナノ粒子(混合フェライトナノ粒子MFe2O4, M = Mn, Co, Ni, Zn)を合成した。仕込みの金属組成比はM:Fe = 1:2とした。マイクロ波照射は、出力275Wのシングルモードのマイクロ波合成装置を用いて行った。また、HRTEM観察、EXAFS測定等による構造解析と、SQUID測定(カンタム・デザイン社製MPMS-XL7SK)による磁性の評価を行った。
3.結果と考察(Results and Discussion)
HRTEM観察から、合成して得られたCoFe2O4ナノ粒子は平均粒径約3.9 nmの均一な粒子であった。EXAFS測定から、立方晶系(Fd-3m)のスピネル構造を有していた。Fig. 1に合成して得られたCoFe2O4ナノ粒子のSQUID測定の結果を示す。300Kでは強磁性体の磁化曲線のようなs字型のループを描くが、バルクでは現れるヒステリシスや残留磁化を持たないナノ粒子特有の磁化曲線であり、超常磁性を示すと考えられる。磁化の飽和も観察される。一方、5Kではヒステリシスや残留磁化を有し、零磁場冷却(ZFC)と磁場中冷却(FC)における磁化の温度依存性で見られるブロッキング温度(約110K)に対応している。今後はCo以外の混合フェライトナノ粒子のSQUID測定を進める予定である。
4.その他・特記事項(Others)なし
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)なし
6.関連特許(Patent)なし