利用報告書
課題番号 :S-16-NI-12
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :電気化学的手法を用いた酸化亜鉛の改質
Program Title (English) :Modification of properties of ZnO films by electrochemical method
利用者名(日本語) :安部功二
Username (English) :K. Abe
所属名(日本語) :名古屋工業大学大学院工学研究科
Affiliation (English) :Nagoya Institute of Technology
1.概要(Summary )
酸化亜鉛(ZnO)は、ゾルゲル法や水溶液法など非真空プロセスで成膜できることが特徴の一つである。しかし、非真空プロセスで成膜したZnOの抵抗率は高く、抵抗率の下げるために真空中や水素中での高温アニールが用いられている。
この研究課題では、室温でZnO薄膜の抵抗率を変化させることを目的とし、ZnO薄膜と白金電極間に水溶液中で電流を流す電気化学的処理を行った。ZnO薄膜のシート抵抗は、ZnO薄膜と白金電極間に流す電流の向きに依存して変化し、電気化学的手法を用いて室温でZnOの抵抗率を変化させることが可能なことを明らかにした。また、光学バンドギャップの測定からキャリヤ密度の増減についても考察した。
2.実験(Experimental)
今回の実験では、スパッタでガラス基板上に成膜したAl添加ZnO薄膜を試料に用いた。電気化学的処理は以下の様に行った。試料の一部(約25 mm2)をリン酸と塩化カリウムの混合水溶液(H3PO4: 4.9×10−5 M、KCl: 5.6×10−3 M)に浸し、ZnO薄膜を陰極、白金を陽極として150 μAの定電流を流した。なお、この電流の向きを順方向、電流の向きを反転させた場合を逆方向と表記する。シート抵抗は4探針法で測定した。また、試料表面を特型走査電子顕微鏡装置で観察した。
3.結果と考察(Results and Discussion)
ZnO薄膜のシート抵抗は、順方向に電流を流した場合に低下し、逆方向に電流を流した場合に増加した。
60秒毎に電流の向きを反転させた場合、試料の透明性は失われなかった。電流の反転を繰り返し、360秒間の処理を行った試料の表面を特型走査電子顕微鏡(SEM) 装置で観察したところ、所々に穴のようなものが観察された以外に大きな変化はなかった(図1)。
初期のシート抵抗が小さい試料ほど、電流反転に依存して大きなシート抵抗変化を示す傾向が見られたため、水素中400℃でアニールした試料に対して、電気化学的処理を行った。電流反転を繰り返すと、シート抵抗は2桁以上変化するようになった。また、同時に光学的バンドギャップのシフトも観察された。順方向に電流を流してシート抵抗が小さくなっている場合は約3.44 eV、逆方向に流してシート抵抗が大きくなっている場合は約3.35 eVであった。この光学バンドギャップのシフトは、キャリヤ密度の増減に伴うBurstein-Moss効果が原因だと考えられる。
今回、シート抵抗変化、間接的ではあるがキャリヤ密度の変化を観察した。ZnO薄膜の特性変化に対して、電気化学的手法の有効性を示すことができたので、今後、非真空プロセスで作製したZnO膜に応用する予定である。
4.その他・特記事項(Others)
なし。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) T. Okubo, K. Abe, and H. Ishikawa, 応用物理学会第77回秋期学術講演会, 平成28年9月14日.
(2) K. Abe, T. Okubo, and H. Ishikawa, 応用物理学会第64回春季学術講演会, 平成29年3月16日.
6.関連特許(Patent)
なし。







