課題番号 ：S-15-NI-32
利用形態 ：共同研究
利用課題名（日本語） ：電界による磁気秩序制御のためのBiFe1-xGaxO3粉体の合成
Program Title (English) ：Synthesis of BiFe1-xGaxO3 powders for magnetic order control by electric field
利用者名（日本語） ：五味　学, 倉田憲治
Username (English) ：M. Gomi, K. Kurata
所属名（日本語） ：名古屋工業大学大学院工学研究科
Affiliation (English) ：Nagoya Institute of Technology, Graduate School of Engineering

１．概要（Summary ）
磁界不要な磁気冷凍法として電界による構造相転移に伴う磁気秩序制御の可能なマルチフェロイック材料の利用が考えられる。この材料には、磁気秩序温度を室温を挟んで大幅に変えるため、電界による１次構造転移が要求される。本研究では、従来、高温高圧法でしか合成できなかったFeサイトをGa置換したBiFeO3　(BFO)を取り上げ、常温低圧で合成できる新しい手法を開発するとともに、磁気秩序温度の決定を行った。
２．実験（Experimental）
BiFe1-xGaxO3 (x=0~0.5)粉体は、各成分の硝酸塩を酢酸およびエチレングリコール中に溶解させた溶液を乾燥後、300℃で硝酸塩を分解したものを前駆体として用いた。これを熱処理し、結晶性の粉体を得た。また、置換に伴う磁気秩序の変化をメスバウアー分光法により調べた。
３．結果と考察（Results and Discussion）
Fig. 1はGa置換に伴うXRD変化を示す。xの増加とともにx=0.1 ~ 0.2でBFOの示す菱面体晶相R (空間群R3c)から擬正方晶相T (空間群Cm)へ転移した。従来、Ga置換BFOは高温高圧合成でのみ得られていたが、本手法では常圧低温でx=0.4まで単相で得られることがわかった。
Fig. 2は、BiFe0.7Ga0.3O3粉体のメスバウアースペクトル温度依存性を示す。78 Kでは、反強磁性体(TN=643 K)BFOに特有の非対称な6本の吸収ピークが観察される。温度上昇とともにこれらは消失し、140 K以上では中心付近に常磁性のダブレットのみとなった。これらの結果は、擬正方晶相が、140 K付近に反強磁性ネール温度を持つことを示す。擬正方晶相が低い秩序温度を持つことは、c軸方向でのFe-O-Fe間距離が著しく伸び、交換相互作用が減少したとして理解される。このような磁気的振舞いは、電界印加により菱面体ー擬正方晶間相転移を介して室温で磁気的秩序(菱面体晶)―無秩序状態(擬正方晶)を制御可能であることを示唆している。
４．その他・特記事項（Others）
本研究は、科学研究費助成事業(挑戦的萌芽研究)の一部として行われた。また、分光測定は壬生攻教授(名工大)との共同研究として行われた。
５．論文・学会発表（Publication/Presentation）
(1) 五味、倉田、沢村、横田、壬生、第３９回日本磁気学会学術講演会、平成27年9月9日
(2) 倉田、沢村、横田、五味、平成２７年度日本セラミックス協会東海支部学術研究発表会、平成27年12月12日
６．関連特許（Patent）　なし