利用報告書
課題番号 :S-19-JI-0014
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :非天然型構造を含む人工糖鎖の開発とその解析
Program Title (English) :Development and conformational analysis of artificial functional glycans
利用者名(日本語) :矢木宏和1)
Username (English) :H. Yagi1)
所属名(日本語) :1) 名古屋市立大学大学院薬学研究科
Affiliation (English) :1) Graduate School of Pharmaceutical Sciences, Nagoya City University
1.概要(Summary )
糖鎖は、レクチンと総称されるタンパク質との相互作用を介して、その生物機能を発揮する。糖鎖とレクチンとの結合プロセスを正しく理解することで、標的タンパク質に対する親和性や特異性を高めた新たな分子設計を行うことも可能となる。本研究では、動的立体構造解析を指針とした分子設計に基づいて、糖鎖の配座空間を改変することでレクチン親和性を制御することに取り組んだ。
2.実験(Experimental)
ルイスX糖鎖と、これを認識するフコース認識レクチンRSLをモデルとした。NMR計測と大規模分子シミュレーションに基づいて、構造改変を施した人工糖鎖を設計・化学合成した(図1)。調製した糖鎖試料の解析にはBruker NMR AVANCE III 400または800、およびBruker FT-ICR MS SolariXを利用した。
3.結果と考察(Results and Discussion)
ルイスX糖鎖は、神経幹細胞における幹細胞性の維持や、細胞間の接着において重要な役割を担うとされる分岐型糖鎖である。常磁性NMR計測による実験的検証を行なった分子動力学シミュレーションにより、ルイスX糖鎖の動的立体構造を明らかにした。得られた水溶液中における配座空間と、ルイスX糖鎖と相互作用するフコース認識レクチンRSLの結晶構造を比較したところ、このレクチンは、溶液中では極めて存在比の少ないコンフォマーを選択してルイスX糖鎖と結合することが示唆された。そこで、遊離状態では存在比の少ない結合型コンフォマーの割合を高めることで、糖鎖の高親和性化が実現できるであろうという仮説のもと、ルイスXの中でRSLとの相互作用に直接関わらないガラクトース部分を一連のヘキソースに変更した改変体を設計した。分子シミュレーションによる配座解析の結果、マンノース改変体において最も結合型コンフォマーの割合が増加することが予測された。これに基づき改変型糖鎖を実際に化学合成し、レクチンとの結合試験を行った結果、マンノース置換型改変体は当該レクチンに対する親和性が17倍増強されることが示された。このように、遊離糖鎖のコンフォメーション空間を制御する分子設計戦略により、高親和性化合物を創出できることを示すことができた。
4.その他・特記事項(Others)
本研究の成果は、山口拓実博士(北陸先端大・生命機能工学領域)の研究グループらとの共同研究により得られたものです。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
T. Suzuki, S. Yanaka, T. Watanabe, G. Yan, T. Satoh, H. Yagi, T. Yamaguchi, K. Kato, Remodeling of the oligosaccharide conformational space in the prebound state to improve lectin-binding affinity, Biochemistry, 2019, DOI:10.1021/acs.biochem.9b00594
6.関連特許(Patent)
なし。







