利用報告書

高分子ナノ粒子製剤が病原体に及ぼす抗菌作用の評価
橋 知里1), 種村 眞幸2)
1) 愛知学院大学薬学部製剤学講座, 2) 名古屋工業大学大学院未来材料創生工学専攻

課題番号 :S-16-NI-24
利用形態 :共同研究
利用課題名(日本語) :高分子ナノ粒子製剤が病原体に及ぼす抗菌作用の評価
Program Title (English) :Imaging of interaction between polymeric nanoparticles and bacterial cells
利用者名(日本語) :高橋 知里1), 種村 眞幸2)
Username (English) :C. Takahashi1), M. Tanemura2)
所属名(日本語) :1) 愛知学院大学薬学部製剤学講座, 2) 名古屋工業大学大学院未来材料創生工学専攻
Affiliation (English) :1) School of Pharmacy, Pharmaceutical Engineering, Aichi Gakuin University,
2) Department of Frontier Materials, Graduate School of Engineering, Nagoya
Insitute of Technology

1.概要(Summary )
利用者らはこれまでに、バイオフィルム感染症治療を目的とした高分子ナノ粒子ドラッグデリバリーシステム製剤の設計を試みてきた。前回の利用では、製剤設計の最適化のため、ドラッグデリバリーシステム製剤と病原体の相互作用をナノスケールで評価可能な手法を確立できた。今回は、新たにイオン液体を封入した高分子ナノ粒子製剤を調製し、確立した電子顕微鏡法による評価を行うことで、イオン液体を含有した高分子ナノ粒子のバイオフィルム形成菌に対する抗菌活性を評価した。

2.実験(Experimental)
本実験では、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)をモデル菌としてバイオフィルム形成を行った。高分子ナノ粒子は、水中エマルション溶媒拡散法によりPLGAを高分子基剤とし調製した。その粒子表面をキトサンで修飾し、疎水性イオン液体を封入物質に用いた。物性評価として、動的光散乱式粒子径測定装置(ゼータサイザー)を用い粒子径及びゼータ電位測定を行った。透過型電子顕微鏡(TEM)観察には、各ナノ粒子を投与したバイオフィルムを試料に用いた。試料は、緩衝液で2時間処理した後、イオン液体を処理し、真空乾燥した。真空乾燥後、オスミウムコーティングしたものを観察に用いた。観察には、日本電子製のJEM-2100FとJEM-ARM200Fを用い、試料冷却ホルダーで試料を冷却しながら形態観察を行った。

3.結果と考察(Results and Discussion)
確立した環状暗視野法を用いることにより、イオン液体を封入し表面をキトサン修飾した高分子ナノ粒子製剤を投与したバイオフィルムの微細形態を捉えることに成功した。

図1:イオン液体を封入し粒子表面をキトサン修飾した高分子ナノ粒子製剤を投与したバイオフィルムの環状暗視野像
図1に示すように、200-300 nmサイズの高分子ナノ粒子製剤がバイオフィルム形成菌に付着している様子がみられた。特に凝集した高分子ナノ粒子は菌体に付着していただけであったのに対し、分散して存在している高分子ナノ粒子製剤では、ほとんどの場合に菌の接合部に付着していた。これまでの抗菌剤封入高分子ナノ粒子製剤や銀封入高分子ナノ粒子製剤を投与したバイオフィルムとは違い、イオン液体を封入し表面をキトサン修飾した高分子ナノ粒子製剤を投与した系では、菌の接合部や菌体に空隙をもたらしていた。加えて

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