利用報告書
課題番号 :S-16-MS-1029
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :高分子保護金属クラスターの電子状態に関する測定
Program Title (English) :Spectroscopic study on the electronic structure of metal clusters protected
by polymer matrix
利用者名(日本語) :櫻井英博、Setsiri Haesuwannakij, 毛利早智、野村圭吾、本橋優香
Username (English) :H. Sakurai, S. Haesuwannakij, S. Mouri, K. Nomura, Y. Motohashi
所属名(日本語) :大阪大学大学院工学研究科
Affiliation (English) :Graduate School of Engineering, Osaka University
1.概要(Summary )
我々の研究室では、高分子マトリクスによって保護されたコロイド状金属ナノクラスターが擬均一系触媒として多くの反応に対して高活性を示すことを見出している。最近ではその触媒活性は、高分子マトリクスとの相互作用によって大きく変化し、その主たる要因が、マトリクスと金属表面の界面における電子状態の変化に起因されることがわかってきた。金属表面の電子状態を直接測定する手法としてX線光電子分光(XPS)は極めて有力な手法であり、例えばポリビニルピロリドン(PVP)保護金ナノクラスターの触媒活性とXPSのデータは良い相関を示すことは、我々のこれまでの研究でわかっている。そこで今回は同様の測定をPVP以外のマトリクスの系やAu/Pd合金系で実施する。
2.実験(Experimental)
測定は、ナノプラットフォームで公開されている、機器センター所有のXPS(ESCALAB 220iXL)を使用した。各種有機(高)分子保護金属クラスターはそのまま保護された状態で測定に用いた。分析は高真空下(5×10-8 Torr)、線源はAl Kα(1486.7 eV), 15kV, 34 mAで用いた。C 1sのピーク(284.6)を内部標準として解析を行った。
3.結果と考察(Results and Discussion)
PVP保護Au/Pd合金ナノクラスターの電子状態解析
合金ナノクラスターはそれぞれ単独の金属とは異なる触媒活性を示すことから注目を集めているが、単独金属クラスターと異なり、これまでサイズ選択的調製法が開発されていなかったため、そのサイズ効果についての研究例はほとんどなかった。昨年度、我々は1.2-8 nmのスケールでサイズ選択的にAu0.5/Pd0.5:PVPクラスターを調製する手法を開発し、その電子状態解析を行ったが、今年度は同様の手法を用いて、金とパラジウムの比を変化させ、それらを同様に1-8 nmの間で様々なサイズで選択的に調製し、そのサイズ依存性、混合比依存性と触媒活性の関係を観察した。
その結果、ほぼすべてのサイズでPVPマトリクスの影響による低エネルギーシフトが観測され、Au, Pdともに表面がやや負電荷を帯びていることが確認されたが。一方で、Au0.5/Pd0.5の時と比較して、Au-rich系、Pd-rich系においては、顕著なサイズ効果はあまり観測されなかった。このことは、芳香族塩化物の脱塩素水素化反応の触媒活性とも相関しており、Au-rich系では、その触媒活性は、ほぼクラスターの有効表面積に依存しており、量子サイズ効果は見られなかった。
4.その他・特記事項(Others)
昨年度までの施設利用の成果を論文として報告したので、5に記載する。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) “Size-controlled Preparation of Gold Nanoclusters on Hydroxyapatite through Trans-deposition Method”, S. Haesuwannakij, T. Poonsawat, E. Somsook, Y. Yakiyama, R. N. Dhital, H. Sakurai, J. Nanosci. Nanotech. 2017, 17, 4649-4657.
(2) “Partially Fluoride-Substituted Hydroxyapatite as a Suitable Support for the Gold-Catalyzed Homocoupling of Phenylboronic Acid: An Example of Interface Modification”, S. Haesuwannakij. Y. Yakiyama, H. Sakurai, ACS Catal. 2017, 7, 2998-3003.
6.関連特許(Patent)
なし







