利用報告書
課題番号 :S-19-MS-0029
利用形態 :協力研究
利用課題名(日本語) :高品位有機単結晶表面・界面の超高真空中での安定性
Program Title (English) :Stability of the surface and interfaces of organic single crystals
利用者名(日本語) :山田洋一
Username (English) : Y. Yamada)
所属名(日本語) :筑波大学 数理物質系,
Affiliation (English) : Tsukuba University
1.概要(Summary )
真空中での有機単結晶の表面安定性の理解は非常に基礎的であるが、これに関して十分な知見が蓄積されていない。
本協力研究では、貴所平本グループの有機半導体単結晶育成技術を利用して得られる高品位有機単結晶の表面を利用し、その真空中での安定性を系統的に理解する。特に、平本グループが近年作製に成功してきた、rubreneとその誘導体FM-rubreneの高品位単結晶に着目した系統的な研究を行う。このような研究で、表面安定性を支配する要因を特定できれば、エピタキシャル成長やデバイス作製などの真空プロセスの過程で表面を擾乱しないための指針が得られる。これは今後の有機単結晶のデバイス利用や電子状態計測において極めて有益な知見を与える。
2.実験(Experimental)
平本グループの有機半導体単結晶育成装置を利用して有機単結晶試料を作製した。単結晶表面は原子間力顕微鏡で評価した。
3.結果と考察(Results and Discussion)
我々はこれまで、いくつかの有機半導体単結晶の表面の熱安定性やレーザー照射耐性を評価してきた。ペンタセンやルブレンなどの比較的安定な有機単結晶においても、超高真空中においては100℃程度で表面分子の脱離が起こり始めることがわかってきている。一方、テトラセン等は室温においても真空中で脱離を伴う顕著な表面荒れが発生することがわかった。今回、RubreneとFM-Rubreneの単結晶において、超高真空中での熱安定性が異なっており、FM-Rubreneの方が表面の熱安定性やレーザー照射耐性が低いことがわかった。この要因を十分解明するには至っていないため、更なる研究が必要である。
4.その他・特記事項(Others)
なし。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) Zhang, Chunyang; Tsuboi, Hiromu; Hasegawa, Yuri; Iwasawa, Masato; Sasaki, Masahiro; Wakayama, Yutaka; Ishii, Hiroyuki; *Yamada, Yoichi, ACS Omega,2019, 45, 8669-8673.
(2) 渕井 康太、岩澤 柾人、伊藤 真澄、佐々木 正洋、鶴田 諒平、中村 泰生、山田 洋一、2019 第80回 応用物理学会 秋季学術講演会, 平成31年9月20日
6.関連特許(Patent)
なし。