課題番号                ：S-20-NM-0032

利用形態                ：機器利用

利用課題名（日本語）    ：高性能二次元電気泳動法による次世代プロテオミクスの実用化

Program Title (English) ：Practical implementation of next generation proteomics using high performance two dimensional electrophoresis

利用者名（日本語）      ：林　宣宏

Username (English)     ：N. Hayashi

所属名（日本語）        ：東京工業大学生命理工学院

Affiliation (English)  ：School of Life Science and Technology

１．概要（Summary ）

“高性能二次元電気泳動法を用いた次世代プロテオミクス法の開発”の一環として、申請者が独自に開発した二次元電気泳動法で得られたゲル上のスポットを形成するタンパク質の、高精度、かつ、ハイスループットの同定法を開発する。本年度は、月経周期に伴い変化する生理反応の網羅的解析、および、移植片対宿主病(GvHD)の早期診断法の開発を実施した。

２．実験（Experimental）

NIMS分子・物質合成プラットフォームのLC-MS/MS(LXQ)、および、LC-MS/MS (Q-Exactive)を使用して、申請者が調製する、切り出した二次元電気泳動のスポットのゲル内プロテアーゼ消化産物を用いたタンパク質の同定を行う。

月経周期に伴い変化する生理反応の網羅的解析：月経前に食欲亢進の症状がある女性アスリート5 名を対象に、卵胞期と黄体期における過性運動60分, 安静90分の間にそれぞれ5回採取した血清50サンプルルを用いて独自の二次元電気泳動法により得られた画像を相互に比較することで、有意に変化したタンパク質を同定した。

移植片対宿主病(GvHD)の早期診断法の開発：白血病治療のための骨髄移植直後から9週間、週に１度採取した血清を用いて、10名の患者から90枚の二次元電気泳動画像を取得した。

３．結果と考察（Results and Discussion）

月経周期に伴い変化する生理反応の網羅的解析：Apolipoprotein A-IやRetinol-binding protein 4を含む複数のタンパク質が見つかった｡その中には卵胞期でのみ変動するものや黄体期でのみ変動するものが存在し、月経の状態に応じた運動時の生体反応の違いに関する知見が得られた（右図：枠が運動負荷により変動したスポット）。

移植片対宿主病(GvHD)の早期診断法の開発：各患者に関して経時的に変化する二次元電気泳動画像上のスポットを探索することで、経時的に変化する39種類のタンパク質を同定し、免疫系回復のメカニズムに関する新たな知見が得られた。さらに、GvHDを呈した患者検体から得られたデータにより、10種類のGvHDバイオマーカー候補の選定に至っている。

４．その他・特記事項（Others）

本研究は、日本体育大学（月経周期に伴い変化する生理反応の網羅的解析）、および、東京大学医科学研究所（移植片対宿主病(GvHD)の早期診断法の開発）との共同研究である。

５．論文・学会発表（Publication/Presentation）

Sing Ying Wong, Seiko Kato, Frans Rodenburg, Nao Kaburaki, Arinobu Tojo, Nobuhiro Hayashi, 投稿準備

６．関連特許（Patent）

なし