課題番号                ：S-18-NM-0019

利用形態                ：共同設備利用

利用課題名（日本語）    ：高性能二次元電気泳動法を用いた次世代プロテオミクス法の開発

Program Title (English) ：Development of next generation proteomics using high performance two dimensional electrophoresis

利用者名（日本語）      ：林　宣宏

Username (English)     ：N. Hayashi

所属名（日本語）        ：東京工業大学生命理工学院

Affiliation (English)  ：School of Life Science and Technology

１．概要（Summary ）

“高性能二次元電気泳動法を用いた次世代プロテオミクス法の開発”の一環として、申請者が独自に開発した二次元電気泳動法で得られたゲル上のスポットを形成するタンパク質の、高精度、かつ、ハイスループットの同定法を開発する。本年度は、毛髪のプロテオミクス法の開発や、慢性腎疾患の発症メカニズムの解明に関する研究において、実施した。

２．実験（Experimental）

NIMS分子・物質合成プラットフォームのLC-MS/MS(LXQ)、および、LC-MS/MS (Q-Exactive)を使用して、申請者が調製する、切り出した二次元電気泳動のスポットのゲル内プロテアーゼ消化産物を用いたタンパク質の同定を行う。

・毛髪のプロテオミクス法の開発：毛髪から微量含有タンパク質の抽出法を検討した。

・慢性腎疾患の発症機構の解明：急性腎障害の予後においては、若年者よりも高齢者で悪化するが、その原因のひとつが、腎組織内に形成される三次リンパ組織 (Tertiary Lymphoid Tissues, 以下TLT) であることが近年明らかになった。本研究では、TLTをもつ高齢疾患モデルマウスを用いたバイオマーカーの探索とTLT形成メカニズムの解明を目的とした。

３．結果と考察（Results and Discussion）

・毛髪のプロテオミクス法の開発：毛髪を構成する主要成分であるケラチンを残して、それ以外のタンパク質を抽出するための条件を、二次元電気泳動のスポット数で評価することで至適化することで、300以上の微量タンパク質の検出に成功した。

・慢性腎疾患の発症機構の解明：若齢健康、若齢疾患、高齢健康、高齢疾患サンプルのプロテオームの比較解析により、IgM、Fibrinogen、Pregnancy zone protein、Inter alpha-trypsin inhibitorなどのタンパク質で有意な変化が見られた。特に、IgMやFibrinogenに関しては高齢疾患サンプルでの特異的な増加が確認された。今後、ヒト検体を用いた検討実験で、これらがTLTをもつ高齢疾患患者のバイオマーカーとしても使えるかどうかの検証が期待できる。上図：若齢健康(8wsham)、若齢疾患(8wIR)、高齢健康(12Msham)、高齢疾患(12MIR)の二次元電気泳動像

４．その他・特記事項（Others）

本研究は、京都大学大学院医学研究科柳田素子博士との共同研究である。NIMS服部晋也氏、竹村太郎氏に装置利用、サンプル調整で支援を受けた。

５．論文・学会発表（Publication/Presentation）

第41回分子生物学会「プロテオミクスによる急性腎疾患予後の診断標的探索並びに状態解明」宮川まどか¹、近藤 麻紀子²、佐藤 有紀²、Frans Rodenburg¹、柳田 素子²、林 宣宏¹ （¹⁾東工 大・生命理、 ²⁾京大・院医腎内）、2018年11月30日、パシフィコ横浜

６．関連特許（Patent）

なし