利用報告書

高感度ナノウイルスセンサの開発
田中 裕行, 小本 祐貴(大阪大学産業科学研究所)

課題番号 :S-20-OS-0027
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :高感度ナノウイルスセンサの開発
Program Title (English):Development of highly sensitive nanovirus sensor
利用者名(日本語) :田中 裕行, 小本 祐貴
Username (English) :H. Tanaka, Y. Komoto
所属名(日本語) :大阪大学産業科学研究所
Affiliation (English) :The Institute of Scientific and Industrial Research, Osaka Univ.

1.概要(Summary )
 コールターカウンターは、シンプルな電流計測によって様々な微粒子を単一粒子レベルで検出することができる優れたセンサである。しかし、従来のセンサ構造では、効率的にウイルス等ナノ粒子を微小なセンサ部に輸送することが難しく、検出効率が低かった。そこで、粒子検出効率を向上させるための新規流路構造をシリコンウエハ上に作製する加工プロセスの検討を行った。
2.実験(Experimental)
【利用した主な装置】
S10 RFマグネトロンスパッタ装置
S13 反応性イオンエッチング装置
【実験方法】
0.5 mm厚の高抵抗シリコンウエハを基板に用いた。まず、当該ウエハを30 mm角の大きさにカットした。このシリコン小片の表面全体に、RFマグネトロンスパッタ装置を用いて厚さ数十nmのクロム層を蒸着させた。そして、電子線描画装置を用いて微小流路パターンを描画した。現像後、クロムエッチング溶液に基板を浸漬させ、部分的にCrを除去した。残ったCr層をマスクとして用い、Deep-RIE装置を用いて、Si層を数μm掘削した。続いて、基板をCrエッチング溶液に浸漬させ、Crを完全に除去した。これら一連のプロセスを再度行い、さらに深さ約0.5 μmのセンサ部を形成した。最後に、露出した撥水性のSi表面を親水化させる目的で、化学蒸着装置を用いて厚さ10 nmのSiO2層を基板表面全体に蒸着させた。
3.結果と考察(Results and Discussion)
 作製したマイクロ流路の光学顕微鏡並びに走査電子顕微鏡像をFig.1に示す。深さ数μmの微小流路が4個の正方形パターンとして観察されている(左上図)。この流路部に深さ0.5 μmのセンサ部が連結されており(右上・右下図)、こうすることで流体制御によって高効率に微小な粒子をセンサ部に輸送することが可能になる。実験の際には、基板の上側に、ポリジメチルシロキサンで作られたブロックを接着させ、流路全体を封止した。そして、上下に延びた微小流路を介して、中央のセンサ流路部分に電解質液を流入させた。その上で、一対の銀/塩化銀電極を用いてDC電圧を印可し、センサ部を通るイオン電流を測定した。その結果、電解質液に含まれる粒子が1個流路を通過する毎に、パルス状の電流変化が現れた。そしてその頻度は、当初の想定通り、2段の流路構造とすることで、飛躍的に向上した。

Fig. 1. Structure of dual-height microchannels formed on a Si wafer.

4.その他・特記事項(Others)
なし
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし
6.関連特許(Patent)
なし

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