利用報告書

高濃度変性剤中の蛋白質残像構造の解析
桑島 邦博
東京大学・大学院理学系研究科

課題番号 :S-19-MS-0019
利用形態 :協力研究
利用課題名(日本語) :高濃度変性剤中の蛋白質残像構造の解析
Program Title (English) :Studies on residual structures of proteins in concentrated denaturants
利用者名(日本語) :桑島 邦博
Username (English) :K. Kuwajima
所属名(日本語) :東京大学・大学院理学系研究科
Affiliation (English) :Graduate School of Science, University of Tokyo

1.概要(Summary )
 昨年度より,6 M 塩化グアニジウム中の,蛋白質ユビキチンの残存構造を水素/重水素交換法と高分解能NMRを用いて調べてきた。本年度は,二次元NMR 異核一量子相関スペクトルのペプチド・アミド基シグナルの帰属を行い,これらペプチド・アミド基の水素交換保護度を求めることが出来た。三回の独立な測定を行い,それらの結果を平均して水素交換保護度とその標準誤差推定値を求めた。その結果,6 M 塩化グアニジニウム中でも,ユビキチンには,天然様な残存構造があり,これらが,蛋白質のフォールディング分子機構に関与していることが強く示唆された。

2.実験(Experimental)
 分子科学研究所・機器センター(ナノプラットフォーム)に設置されている1H 800-MHz NMR装置(Bruker, Avance800)を用いた。

3.結果と考察(Results and Discussion)
 2019年度前期の協力研究では,水素重水素(H/D)交換反応実施の最適条件を検討するとともに,すべてのペプチド・アミド(NH)基のNMRシグナルの帰属を完了した。シグナルの同定帰属には,{15N, 13C} 二重標識ユビキチンを用い,三次元のHNCACBおよびCBCA (CO)NHの相関スペクトルを測定して行った。72個あるペプチドNHシグナルの全ての同定帰属を完了することが出来た。
 2019年度後期の協力研究では,ユビキチンの6 M グアニジウム中における,確定した最適条件(pD 3.7,15℃)下で,H/D交換反応の実験を繰り返し,実験結果の再現性を確認した。観測された反応曲線は,すべて,単一の指数関数にフィッティングすることができた。計三回の独立した実験を行い,各アミノ酸残基NHプロトンの,観測H/D交換反応速度定数の最確値と標準誤差推定値を求めた。72個あるユビキチンのNH基の内,60個の水素交換保護度を定量的に求めることができた。その結果,強力な変性剤である,6 M GdmCl中においても,蛋白質は完全なランダムコイルではなく,天然構造中でN末端側のβヘアピン(残基2–7と12–17)と中間αヘリックス(残基23-35)の部分に,一部,水素交換保護されている残基が観測された。これらの残基の保護度P は,P = 2~4であり,これは水素結合形成の割合にして,0.5~0.75に相当する。また,310ヘリックスやターン構造部分にも保護されている残基が観測された。したがって,6 M GdmCl中でも,ユビキチンには,天然様な残存構造があり,これらが,蛋白質のフォールディング分子機構に関与していることが強く示唆される。

4.その他・特記事項(Others)
共同研究者:加藤晃一(生命創成探究センター),矢木真穂(生命創成探究センター),谷中冴子(生命創成探究センター)

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) K. Kuwajima, M. Yagi-Utsumi, S. Yanaka and K. Kato, The 19th KIAS Conference on Protein Structure and Function, Seoul, Korea, September 26–28, 2019.

6.関連特許(Patent)
なし。

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