利用報告書

高磁場超伝導磁石用の新しい高エンタルピー含侵樹脂の研究
菊池章弘,平田和人
国立研究開発法人物質・材料研究機構

課題番号 :S-20-NR-0030
利用形態 :共同研究
利用課題名(日本語) :高磁場超伝導磁石用の新しい高エンタルピー含侵樹脂の研究
Program Title (English) :Study of high enthalpy impregnation resins for high field superconducting magnets
利用者名(日本語) :菊池章弘,平田和人
Username (English) :A. Kikuchi, K. Hirata
所属名(日本語) :国立研究開発法人物質・材料研究機構
Affiliation (English) :National Institute for Materials Science

1.概要(Summary )
現在、超伝導コイルのための含侵樹脂材としてはエポキシが広く使用されている。エポキシは粘性が高いため固化後に気泡が含有しやすく、それら多数の気泡がクラック発生の起点となって樹脂の機械的強度が低下することが懸念されている。一方、近年、ナフサ留分であるジシクロペンタジエンを用いた熱硬化性樹脂「PENTAM8000」が、新しい超伝導磁石用含侵樹脂材として注目されている。PENTAM8000はエポキシと比較して粘性が低く、さらに自在に制御できるため、樹脂に巻き込む気泡を極力少なくすることができる他、コイルの内部まで十分に樹脂を浸透させてしっかり含侵することが期待できる。また、固化後の低温機械特性は、エポキシと同等の強度でありながら伸びは二倍以上あり、エポキシに比べて降伏しやすいため、クラック伝播によるコイル破壊の防御が期待される。本研究では、PENTAM8000に対して、極低温で大きな比熱容量をもつGd2O3粉末をフィラーとして充填した新しい含侵樹脂材を作製し、その極低温における比熱容量の温度依存性について明らかにする。

2.実験(Experimental)
ジシクロペンタジエン・「PENTAM8000」の極低温での比熱容量の測定を、ナノ材料熱電特性評価装置(PPMS)を使用して行った。

図1. サンプルホルダーの外観
図1に示すサンプルホルダーのステージにPENTAM8000の小片をグリスで固定し、温度を2Kまで下げながら比熱容量を測定した。

3.結果と考察(Results and Discussion)
図2 に新しい含浸樹脂材の比熱測定の結果を示す。ジシクロペンタジエン・「PENTAM8000」にGd2O3粉末を充填させることで、6K以下の極低温での比熱容量増大させることが可能であることが判明した。

図2. 新しい含浸樹脂材の極低温における比熱容量

4.その他・特記事項(Others)
本研究はNAISTの技術専門職員・岡島康雄氏に御担当いただいた。ここに謝意を表する。

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
「なし。」

6.関連特許(Patent)
「なし。」

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