利用報告書
課題番号 :S-19-OS-0018
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :高結晶性ナノカーボン材料の創成とデバイス応用
Program Title (English) :Fabrication of highly crystalline nanocarbon materials for the device applications
利用者名(日本語) :根岸 良太,小林 慶裕
Username (English) :R. Negishi and Y. Kobayashi
所属名(日本語) :大阪大学大学院工学研究科、精密科学・応用物理学専攻
Affiliation (English) :Dep. of Applied Physics, Graduate School of Engineering, Osaka University
1.概要(Summary)
バルクグラファイトからの化学剥離により合成される酸化グラフェンは、生産性に優れるため電子デバイス材料への応用が注目されている。酸化グラフェン材料は絶縁性のため還元処理が必須となるが、化学剥離過程で生成した欠陥構造が還元処理後に多く残存するため、グラフェン本来の優れた電子輸送特性が消失する課題がある。本課題では、還元過程に微笑量のカーボンガスを添加することで、高結晶性の多層グラフェンの形成に成功したので報告する。
2.実験(Experimental)
【利用した主な装置】
3.結果と考察(Results and Discussion)
図1に、合成した還元型酸化グラフェン薄膜の電子顕微鏡像を示す。塗布条件を最適化することで連続膜が形成していることを確認した。この連続膜を形成した多層グラフェンのキャリア輸送特性を図2に示す。 グラフェン層の数を増やすと、導電率が向上する。 これは、各グラフェン層に電流が効率的に流れることを意味している。 一方、キャリアの移動度は層数に依存しない。 一般に、オーダー積層構造を持つ多層グラフェンの電子構造は強い層間結合により放物線状の分散に近づくため、層の数が増えると、積層グラフェンのキャリア移動度は低下する。 この結果は、弱い層間結合により、多層グラフェンの電子構造が単層グラフェンの電子構造に類似していることを示している。以上の結果は、還元処理した酸化グラフェン多層膜では、弱い層間結合に起因した乱層積層の形成により、優れた電子輸送特性を有することを示している。
4.その他・特記事項(Others)
なし
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1)Ryota Negishi, Yuriko Tadano, Yuta Nishina, Masashi Akabori and Yoshihiro Kobayashi “Synthesis of highly crystalline multilayer graphene from defective graphene oxide materials” International Conference on the Science and Application of Nanotubes and Low-Dimensional Materials (NT19) (July 21-26, 2019).
6.関連特許(Patent)
なし