利用報告書
課題番号 :S-14-NU-0014
利用形態 :共同研究
利用課題名(日本語) :高透明高導電性複合材料に関する研究
Program Title (English) :Study on composites with high conductivity and transparency
利用者名(日本語) :多田薫,田村和弘,大澤六合豊
Username (English) :K. Tada, K.Tamura, K. Osawa
所属名(日本語) :金沢大学理工研究域
Affiliation (English) :College of Science and Engineering, Kanazawa Univ.
1. 概要(Summary )
グラフェンとは炭素原子が六角形格子ネットワークをとる厳密には単原子層シートのことである。この特異な構造から高い電気・熱伝導性や柔軟性などの特徴を持ち、次世代の材料として幅広い分野から応用が期待されている。しかし、十分に薄いグラフェンを大量に生産する方法は未だ確立されておらず、その作成方法が求められている。本研究では作成方法が比較的容易で、大量生産が可能な溶媒抽出法に注目し、グラファイトからグラフェンの薄層化について検討した。
2. 実験(Experimental)
原料には和光純薬工業(株)製グラファイトを、溶媒には有機溶媒を用いた。剥離処理として攪拌及び超音波照射、後処理として遠心分離、乾燥を行った。さらに、溶媒中のグラファイト濃度変化の影響についても検討した。
グラファイトの剥離は、走査電子顕微鏡(SEM)、原子間力顕微鏡(AFM)とラマン分光法の三種類で評価した。SEMは日立ハイテク(株)製S-4500を使用し、表面形状を観察した。AFMは日本分光(株)製JSTM-4200Dを使用し、表面の厚みの測定から層数を推算した。ラマン分光法はレニショー(株)製inViaを使用し、ピークの形状やシフトから層数について検討した。
3.結果と考察(Results and Discussion)
120分間超音波(40kHz)照射した後のSEM及びAFM画像を図1及び図2に示す。図1のSEM画像から表面が段状であり、層数にばらつきがあると考えられる部分が見られた。図2のAFM画像から凹凸を測定した結果、薄層化が最も進んだところで約2[nm]であった。グラファイトの層間距離が約0.335[nm]より、この部分では約6層ほどであると推算できた。
Fig.1 SEM image Fig.2 AMF image
図3に超音波照射前と120分間照射後のラマンスペクトルを示す。ラマンスペクトルのピークの形状から一層のグラフェンは確認できなかった。
Fig. 3 Raman spectra
有機溶媒を用いた溶媒抽出法における攪拌や超音波処理により、グラフェンの薄層化が進行した。しかし、濃度による薄層化への影響は確認できなかった。
4.その他・特記事項(Others)
1)Y.Hernandez et al., Nature Nanotechnology,
3, 563-568(2008)
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
該当なし
6.関連特許(Patent)
該当なし