利用報告書
課題番号 :S-16-NM-0073
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :魚鱗から抽出したコラーゲンのキャラクタリゼーション
Program Title (English) :Characterization of collagen extracted from fish scale
利用者名(日本語) :畑山博哉
Username (English) :Hirosuke Hatayama
所属名(日本語) :東京都立産業技術研究センター
Affiliation (English) :Tokyo Metropolitan Industrial Technology Research Institute
1.概要(Summary)
コラーゲン線維ゲルは生体吸収性や細胞接着性に優れるため、組織工学や再生医療分野で人工細胞外マトリクスとして用いられてきた。原料としてはブタやウシから抽出されるコラーゲンが一般的であるが、新たなコラーゲン原料の探索を行った。東南アジア原産の魚類に着目したが変性温度が未明であったため、鱗からの円二色性分析による変性温度を把握する必要が生じた。コラーゲンらせんに起因する221 nmの円二色性を測定したところ、変性温度が約36℃と分かり、本研究で用いた抽出工程においては、魚鱗から抽出・精製されたコラーゲンは未変性状態を維持することが確認できた。
2.実験(Experimental)
【利用した主な装置】
・円偏光二色性分光計(日本分光、J-725型)
【実験方法】
魚鱗から抽出したコラーゲン水溶液(pH3希塩酸)を、セル温度を制御できる円偏光二色性装置を用いて10℃から50℃までの昇温過程における3重らせんに起因した221nmの円二色性を追跡した。円二色性は加温とともに減少し、半値になるときの温度から変性温度を算出した。
3.結果と考察 (Results and Discussion)
抽出されたコラーゲンの円二色性は加温とともに減少し、半値になるときの温度から変性温度は約36℃と算出された(図1)。コラーゲン抽出の過程においてコラーゲンが未変性状態を維持していることが実証された。36℃という魚類としては非常に高い変性温度は、既に細胞培養基材して利用されるテラピア鱗由来コラーゲンの変性温度に匹敵する。温暖な海域の東南アジア原産の魚類の鱗由来コラーゲンが、テラピア鱗と同様に高い変性温度を有するコラーゲン資源であることが示唆された。
図1 昇温過程におけるコラーゲンの円二色性の追跡
4.その他・特記事項(Others)
装置の使用方法に関してトレーニングを受け、測定時のトラブルに対応していただいた(ご担当者:箕輪様、竹村様、李様)。
共同研究者等(Coauthor):
柚木俊二(東京都立産業技術研究センター)
成田武文(東京都立産業技術研究センター)
藤井恭子(東京都立産業技術研究センター)
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし。
6.関連特許(Patent)
なし。







