利用報告書

黒色ZrO2-xにおける酸素欠損の結合状態、電子状態の解明
松田元秀 1), 志田賢二2) , 中村江利3)
1) 熊本大学 大学院 先端科学研究部, 2) 熊本大学 工学部, 3) 熊本大学 大学院 自然科学教育部

課題番号 :S-19-MS-1076
利用形態 :施設利用
利用課題名(日本語) :黒色ZrO2-xにおける酸素欠損の結合状態、電子状態の解明
Program Title (English) :Elucidation of bonding state and electronic state of oxygen deficiency
in black ZrO2-x
利用者名(日本語) :松田元秀 1), 志田賢二2) , 中村江利3)
Username (English) :M. Matsuda1), K. Shida2), E. Nakamura3)
所属名(日本語) :1) 熊本大学 大学院 先端科学研究部, 2) 熊本大学 工学部,
3) 熊本大学 大学院 自然科学教育部
Affiliation (English) :1)Faculty of Advanced Science and Technology, Kumamoto University
2)Faculty of Engineering, Kumamoto University
3)Graduate School of Science and Technology,Kumamoto University

1.概要(Summary )
近年、エネルギー問題や環境問題改善に期待される光-エネルギー変換材料において、光を効率よくエネルギー変換できれば光電素子、光触媒などへの実用化が期待される。申請者らは資源的に豊富かつ、化学・機械的安定性に優れ、TiO2 をはじめとする他の金属酸化物に比べて伝導帯の下端と水素還元電位との差が大きいジルコニア(ZrO2)に着目し、可視光を吸収可能なバンドギャップの小さな ZrO2 粉末の創製を試みてきた。先行研究では、ZrO2 粉末の水素還元処理で、黒色を呈するバンドギャップの小さな ZrO2 粉末が開発されている。黒色を呈する理由が酸素欠損とされているがその詳細は明らかとされていない。我々の研究グループでは、非晶質ZrO2を低酸素分圧下で熱処理し、安全かつ簡便に黒色 ZrO2 粉末を得る事に成功している。この黒色 ZrO2 粉末の空気中でのTG-DTA測定結果から、600~700℃付近で重量増加がみられ、得られた 黒色 ZrO2 粉末は先行研究と同様に酸素欠損を有する事が分かった。本申請課題では黒色 ZrO2-x粉末を ESR および XPS を用い結合状態、電子状態を明らかにする事を目的とした。
2.実験(Experimental)
実験に供した黒色ZrO2-x試料はゾル‐ゲル法により合成した非晶質ZrO2粒子を低酸素分圧下(1×10-18 atm O2)で1373 K、1 h 熱処理することで得た(黒色ZrO2-x)。比較として空気中で1373 K、1 h 熱処理した試料も作製した(白色ZrO2)。これらについてESR(Bruker E500)およびXPS(Omicron EA-125)測定を実施した。
3.結果と考察(Results and Discussion)
黒色ZrO2-x試料の4Kおよび300KのESR測定の結果、g=2.00付近に不対電子の存在を示す強いシグナルが観測されたが、白色ZrO2ではそのシグナルは観測されなかった。これらの結果から、酸素空孔を有する黒色ZrO2-xでは自由電子の存在が示唆された。また、白色ZrO2ではZr3+の存在を示すシグナル(g値が1.97付近)が観測され1373 Kで作製された白色ZrO2では、微量ではあるが酸素欠損を含み、電気的中性を保つためにZrに余分な電子が存在し、Zr3+のシグナルが観測されたことが考えられる。これに対して、黒色ZrO2-xでは多量の酸素欠損を含むが、多量にZr3+を含むと不安定であるため、余剰電子はZr3+ではなく酸素空孔付近に不対電子として存在していると考えられる。また黒色ZrO2のXPS測定ではO1sスペクトルが高結合エネルギー側へのシフトが観測された。以上の事から黒色ZrO2-xと白色ZrO2では酸素欠損量の違いにより、異なる結合状態、電子状態を示すことが明らかとなった。
4.その他・特記事項(Others)
機器利用に際しては機器センター 浅田瑞枝様、伊木志成子様、極端紫外光研究施設 酒井雅弘様による技術支援を賜りました。この場を借りて御礼申し上げます。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1)中村江利,志田賢二,三澤賢明,高良明英,松田光弘,下條冬樹,松田元秀, 日本セラミックス協会 第58回セラミックス基礎科学討論会, 令和2年1月9日
6.関連特許(Patent)
なし

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