課題番号 ：S-20-CT-0098
利用形態 ：機器利用
利用課題名（日本語） ：酢酸生成菌による酸化鉄変換についての研究
Program Title (English) ：Reductive conversion of iron oxides by homoacetogenic bacteria.
利用者名（日本語） ：五十嵐健輔1)
Username (English) ：K. Igarashi1)
所属名（日本語） ：1) 産業技術総合研究所北海道センター　生物プロセス研究部門
Affiliation (English) ：1) Bioproduction Research Institute, National Institute of Advanced Industrial Science & Technology (AIST).

１．概要（Summary ）
　酢酸生成菌は、様々な嫌気環境に生息し代謝物として主に酢酸を生産する細菌のグループである。本研究では、中温性の酢酸生成菌を対象に、あまり研究が進んでいない鉄還元活性、そして還元産物について明らかにすることを目的とした。研究の結果、Sporomusa属の酢酸生成菌は高い還元活性をもち、酸化鉄を還元し溶解できること、そして培養条件によっては、還元的に別の鉱物(マグネタイトなど)に変換できることが示された。

２．実験（Experimental）
各種酢酸生成菌を酸化鉄(例えばFeO(OH))の存在下で培養した。還元活性は、フェロジン法による二価鉄の定量により行った。還元産物は、X線回折装置(XRD, RINT2000, RIGAKU, 公立千歳科学技術大学登録機器)での分析により同定した。また、酸化鉄還元が進行している培養由来の沈殿を電界放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM, JSM-7800F, JEOL, 公立千歳科学技術大学登録機器)にて観察した。

３．結果と考察（Results and Discussion）
種々の酢酸生成菌の中でも、特にSporomusa属に属する複数の細菌で高い酸化鉄還元活性が見られた。リン酸塩を含む一般的な培養条件では、酸化鉄は還元され溶存の二価鉄に変換された。一方、リン酸濃度を低下させた培養では、酸化鉄は部分的な還元を受けマグネタイト(Fe3O4)に変換されることが分かった(図1)。培養物のFE-SEM観察の結果、酢酸生成菌は酸化鉄に付着することで効率的な還元を行っていることが示唆された(図2)。本研究から、酢酸生成菌の代謝を酸化鉄の溶解手法、そして、安価な酸化鉄から機能性材料であるマグネタイト粒子の合成法に利用できる可能性が示唆された。

４．その他・特記事項（Others）
本研究の遂行にあたり、公立千歳科学技術大学の河野敬一先生、および技術スタッフの方々から機器の使用方法をご教授頂くなど多大なご協力を賜りました。この場を借りて深く御礼申し上げます。

５．論文・学会発表（Publication/Presentation）
(1) Igarashi K. and Kato S., (2021), Frontier in Microbiology, 12:600808.

６．関連特許（Patent）
なし。