利用報告書
課題番号 :S-19-MS-1086
利用形態 :装置利用
利用課題名(日本語) :183W NMRによる樹脂製造用のタングステン錯体触媒系の分析
Program Title (English) :183W NMR Characterization of Tungsten Catalysts for Olefin Polymerization
利用者名(日本語) :押木俊之
Username (English) :T. Oshiki
所属名(日本語) :岡山大学大学院自然科学研究科
Affiliation (English) :Graduate School of Natural Science and Technology, Okayama University
1.概要(Summary )
183WはI = 1/2の核でNMR測定には魅力的だが、その相対感度は13Cの約6%と低いこともあり、錯体化学分野において系統的な測定は行われていない。文献を調べても、詳細な測定条件の記載はなく1)、濃度条件や緩和時間と関係する待ち時間の設定など不明のままであった。2013年に私は機器センター装置利用で183W核の測定を試みたが、当時はシグナルがまったく観測されなかった。最近になり、サンプル濃度や測定条件を株式会社JEOL RESONANCEの協力を得て調べた結果、確実にシグナルが観測できることがわかってきた。そこで、自ら新しく合成したタングステン錯体の183W NMRを、自らの手で測定し、錯体の分子構造とシグナル位置の関係を調べた。測定の結果、183W NMRのシグナル検出に成功するとともに、プロトンとのデカップルに関する情報を得た。
2.実験(Experimental)
機器センターのJNM-ECA600, 10 mm T10Lプローブを使った。サンプルチューブは Wilmad社の10mm径の513-7LPV-7を使った。サンプル量は約250mg, 約500mgの2種類を用意した。溶媒は軽溶媒(トルエンあるいはTHF)に、体積として約10%の重ベンゼンをロック用に混ぜた。
3.結果と考察(Results and Discussion)
約500mg/3mLのサンプル濃度の非常に高い条件で、待ち時間20秒で測定した。測定開始後30分後にはシグナルが画面上で確認できることがわかった。すなわち、SN比のよいデータを得るために長時間積算をするかどうかは、測定開始後にすぐ判断できることがわかった。測定時に90度パルスで測定するアドバイスも受け、30度パルスとの比較測定をした。その結果、90度パルスのほうが予想どおりSNのよいシグナルが得られた。ただし、緩和時間の関係からすべてのサンプルでうまくいくとは限らないので、今回は30度パルスで測定を続けた。
図1が183Wのシグナルで、緑色の線がノンデカップル、茶色の線が1Hデカップルの結果である。
タングステン中心から3結合離れたプロトンにより結合定数3Hzでシグナルが分裂することが今回の測定で明確にわかった。これは錯体構造と密接な関係があり、錯体構造と化学シフト値の関係が概ね明らかになったことと合わせ、重要な成果である。また、従来の半分の濃度である、約250mg/3mLでシグナルの検出が可能であることも初めて確認できた。今回シグナルを観測できなかったサンプルについては、おそらく観測範囲外(プラスマイナス500ppm)に現れる可能性があり、今後、より広い領域でシグナルを探索する必要がある。
このように、183W核の測定条件をより明確に決めることができ、今後の錯体触媒系の本格的な分析に向け大きな成果を得ることができた。
4.その他・特記事項(Others)
(1) Cross, W. B.; Parkin, I. P.; O’Neill, S. A.; Williams, P. A.; Mahon, M. F.; Molloy, K. C. Chem. Mater. 2003, 15, 2786.
基本的な測定条件を特定いただいた株式会社JEOL RESONANCE、測定前の講習や条件設定など、支援いただいた長尾春代技術支援員に感謝する。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) 押木俊之, 令和元年度大学等シーズ発信会(岡山県), 令和2年3月16日
6.関連特許(Patent)
なし。







