利用報告書

2-アミノエタンチオール修飾電極のキノンに対する電気化学応答特性評価
内藤久実1) , 高田主岳1)
1) 名古屋工業大学大学院工学研究科

課題番号 :S-15-NI-39
利用形態 :技術代行
利用課題名(日本語) :2-アミノエタンチオール修飾電極のキノンに対する電気化学応答特性評価
Program Title (English) :Study of electrochemical behavior for quinone at 2-aminoethanethiol modified electrode
利用者名(日本語) :内藤久実1) , 高田主岳1)
Username (English) :K. Naito1), K. Takada1)
所属名(日本語) :1) 名古屋工業大学大学院工学研究科
Affiliation (English) :1) Graduate School of Nagoya Institute of Technology

1.概要(Summary)
 2-アミノエタンチオール(AET)は、DNAやカーボンナノチューブなどの様々な物質を電極上に修飾する際のアンカーとして広く用いられている。本研究ではAET修飾金電極のキノンに対する特異的な電気化学応答のメカニズムの解明を目的としている。多結晶および単結晶金電極上でのキノンの酸化還元反応を詳細に検討し、さらに、これに伴うAET膜の構造変化をSTMにより評価している。

2.実験(Experimental)
 13 mm x 13 mmに切断したマイカを劈開して新しい面を出し、高真空抵抗加熱蒸着装置 (JIS-300AK、シンク)内に設置した。チャンバー内の圧力を約10-4 Paまで下げ、300 °C で約2時間ベーキングした後、金を厚さ200 nm蒸着して単結晶金電極を作製した。多結晶金電極は、スパッタ装置(Quick Coating SC-701、サンユー電子)を用いて、上述のマイカ上に金を100 nmスパッタすることにより作製した。電気化学測定はポテンショスタット(HZ-5000、北斗電工)により行った。STM測定は走査プローブ顕微鏡 (JSPM-5200)により行った。

3.結果と考察(Results and Discussion)
 AET修飾多結晶金電極の5 mMヒドロキノンを含む0.1 MNaClO4水溶液中における100 mV s-1のCV測定では、Epは530 mVであった。その後+0.9 V vs. Ag/AgClを30分間印加し、再びCV測定を行うと、Epは120 mVまで小さくなり、未修飾金電極のCVとほぼ重なった。また-0.5 Vを10分間印加した場合、Epは520から480 mVまでしか小さくならなかった。これより、初期状態にEpが大きくなるのはヒドロキノンが関係し、その減少にはヒドロキノンの酸化が関与していることが示された。さらに、電極を測定溶液中にそのまま3時間放置し、再びCV測定を行うと、Epは530 mVと大きくなり、初期状態のCVに近づいた。この結果は、Epが変化する現象は可逆であり、AET膜の剥離によるものではないことを示す。
 未修飾単結晶金電極およびAET修飾単結晶金電極のSTM測定を行った。未修飾金電極ではテラスが広がっていたのに対し、AETを修飾すると、電極表面には凹凸が存在した(Fig. 1)。走査範囲が14 x 14 nmの測定では、表面全体に約0.2 nmの凹凸と、さらにその上に約0.04 nmの小さな凹凸が存在した。この小さな凹凸はAETによるものと考えられたが、配向性は確認されなかった。これは、AETのアミノ基が大気中の二酸化炭素と反応してカルバミン酸塩を形成する、あるいは酸素により酸化されるためとの報告もあるため、実際に配向していないかは今後詳細に検討する必要がある。

Fig. 1 (A) 金被覆マイカおよび (B) AET修飾金被覆マイカのSTM像

4.その他・特記事項(Others)
 真空蒸着装置による単結晶金電極の作製は、猪股智彦准教授の技術支援により行った。

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) 内藤久実, 高田主岳, 湯地昭夫, 日本分析化学会第64年会, 2015年9月18日.
(2) 内藤久実, 市川功二, 前田友梨, 安井孝志, 高田主岳, 湯地昭夫, 電気化学会第83回大会, 2016年3月31日.

6.関連特許(Patent)
 なし

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