利用報告書
課題番号 :S-16-NM-0016
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :ABC積層三層グラフェンにおける非局所輸送の探索
Program Title (English) :
利用者名(日本語) :島﨑 佑也(課題申請者のみを記載、指導教官や共同研究者等の記載不要)
Username (English) :Y. Shimazaki
所属名(日本語) :東京大学大学院工学系研究科物理工学専攻
Affiliation (English) :Department of Applied Physics, University of Tokyo
1.概要(Summary)
二次元材料であるグラフェンは、層数、積層構造に応じて様々に異なる物性を示す。特定の積層構造を有する多層グラフェンにおいては、反強磁性秩序の形成が示唆されており[1]、これを用いて電子のスピン自由度、バレー自由度を結合した新規なエレクトロニクスの創生が期待できる[2]。本研究で用いる三層のグラフェンについては反強磁性秩序を有するABC積層以外にABA積層が存在し、ABC積層を選択的に利用する必要がある。ラマン測定を用いて積層構造を判別することが可能であり[3]、ラマンイメージングを行うことで積層ドメインを可視化した。
2.実験(Experimental)
【利用した主な装置】
高速レーザーラマン顕微鏡
【実験方法】
スコッチテープ法を用いてグラファイト(Kish graphite)を劈開し、SiO2/Si (SiO2:285nm) 基板上にグラフェンを作成した。光学顕微鏡を用いてコントラストから層数を特定し、三層のグラフェンを試料として準備した。得られた試料について高速レーザーラマン顕微鏡を用いて分析を行った。励起光には波長532nmのレーザーを用いた。
3.結果と考察 (Results and Discussion)
試料に対してラマンイメージングを行い、ラマンシフト値2700cm-1付近の2Dモードのピーク位置をプロットしたものをFig.1 (a)に示す。緑色の線で囲われた三層の領域の中で、ピーク位置の異なる2種類のドメインが存在することがわかる。Fig.1 (b)に実際のラマンスペクトルを示す。ピーク形状の対称性[3]からFig.1(a)に赤で示した領域がABC積層、青で示した領域がABA積層であることがわかり、積層構造の識別及び積層ドメインの可視化に成功した。ABC積層構造部分を用いて良質な絶縁層である六方晶窒化ホウ
Fig. 1 (a) Imaging of the 2D mode peak position.
(b) 2D mode Raman spectrum. Red (blue) curve is the averaged data for the area indicated by red (blue) rectangular in (a).
素(h-BN)に挟み込んだ試料を作成した結果、試料作成の過程で積層構造がABA積層に変化していることがその後の量子ホール測定から判明し、試料作成手法の再検討が必要であることが明らかになった。
4.その他・特記事項(Others)
本課題は科研費新学術領域 “原子層科学” (No. JP25107003)、キヤノン財団、科研費基盤研究S (No. 26220710)の補助を受けて行われました。共同研究者で研究をご指導いただいた東京大学 物理工学専攻の樽茶清悟氏、山本倫久氏、試料作成、測定、解析を担当していただいた同専攻の田中未羽子氏、h-BN結晶をご提供いただいた物質・材料研究機構の谷口尚氏、渡邊賢司氏、またラマン装置の使用方法をご教授いただきましたPFの服部晋也氏に深く感謝致します。
[1] R. T. Weitz. et al., Science 330, 812 (2010)
[2] F. Zhang et al., Phys. Rev. Lett. 106, 156801 (2011)
[3] C. H. Lui et al., Nano Lett. 11, 164 (2011)
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし
6.関連特許(Patent)
なし







