利用報告書

Co3-XNiXO4 (X = 0-1.28)の磁性の解明
林兼輔1)
1) 岐阜大学大学院 工学研究科

課題番号 :S-19-MS-1051
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :Co3-XNiXO4 (X = 0-1.28)の磁性の解明
Program Title (English) :Magnetic properties of Co3-XNiXO4 (X = 0-1.28)
利用者名(日本語) :林兼輔1)
Username (English) :K. Hayashi1)
所属名(日本語) :1) 岐阜大学大学院 工学研究科
Affiliation (English) :1) Graduateschool of Engineering, Gifu University

1.概要(Summary )
Co3-XNiXO4(CNO)は、組成式AB2O4で表される、酸素イオンの四面体位Aサイトと八面体位Bサイトで構成されるスピネル酸化物の一つである。CNOは古くから磁性体と知られており、X = 1.0に関しては多くの研究がなされてきたが、X = 1.0以外の組成のCNOにおける磁気物性に関して詳細に述べた報告は少ない[1]。その理由はCoとNiとOの大気雰囲気における状態図においてCNOの相が存在せず、CNOが準安定な物質のためである[2]。そこで我々は、様々な組成のCNOを作るために、CNOの前駆体としてCo1-YNiY(OH)2 (X = 3Y)を作製し、それを熱分解することでCNOを作製した。CNOの前駆体をCo1-YNiY(OH)2にすることで、再現性がよくCNOの合成が可能になり、さらに、難しいとされていた1.0 < XのCNOの合成にも成功した[3]。 本研究では、0 ≤ X ≤ 1.28のCNOの磁気物性と実験結果から求めたCNO内のカチオン分布を報告する。 2.実験(Experimental) CNOの前駆体であるCo1-YNiY(OH)2 は均一沈殿法によって合成し、Co1-YNiY(OH)2 を大気雰囲気673 Kで3時間アニールすることでCNOを合成した。  Co1-YNiY(OH)2前駆体とCNOの結晶構造をXRDにより同定し、CNOの磁気物性に関しては分子研の超伝導量子干渉素子(SQUID)を用いて、M-H loopと交流帯磁率を測定し、飽和磁化と磁気転移温度を求めた。 3.結果と考察(Results and Discussion) XRDの結果、CNOはX ≤ 1.28の範囲で、単相で合成出来ていることが確認された。  単相で合成された0 ≤ X ≤ 1.28のCNOについて、磁気物性を調べるため、SQUIDを用いて交流帯磁率の温度依存性と5 KでのM-H loopを測定した。図(a)に交流帯磁率の温度依存性から求めた、CNOの磁気転移温度TNの組成依存性を示す。図(a)から分かるように、X = 0からX = 0.23で一度下降し、X = 0.74までは大幅にTNが増加し、0.74 < Xでは緩やかにTNが上昇した。そして、X = 1.28の時その磁気転移温度TNはTN=290 Kと常温で磁性を示すことが分かった。 図(b)のMS-Exp.が、5 KでのM-H loopから求めた飽和磁化である。MAとMBはXRDの結果と飽和磁化の組成依存性の結果から求めたA,Bサイトのカチオン分布見積もりから計算されるA,Bサイトの磁化であり、MS-FitはMAとMBから求められる理論的な飽和磁化である。 図(b)から分かるように、実験値のMS-Exp.が、理論値のMS-Fitと一致しており、本研究で見積もられたCNOのA,Bサイトのカチオン分布が十分正しいことが示された。 4.その他・特記事項(Others) 参考文献:[1] Y. Bital., et al., Sci. Rep. 5, 15201 (2015). [2] R. J. Moore, et al, J. Mater. Sci. 9, 1393 (1974). [3] J. Singer, et al, NASA Technical Memorandum 100239 (1987) 5.論文・学会発表(Publication/Presentation) (1) K. Hayashi, K. Yamada and M. Shima, 2019 MRS Fall Meeting and Exhibit, 令和1年12月1-6日. (2) K. Hayashi, K. Yamada and M. Shima, ICMaSS 2019, 令和1年11月1-3日. (3) 林兼輔, 山田啓介, 嶋睦宏, 第80回応用物理学会秋季学術講演会, 令和1年9月18-21日. 6.関連特許(Patent) 無し

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