利用報告書

Cs含有珪酸塩ガラスの119Snメスバウアー分光測定
小暮敏博
東京大学 大学院理学系研究科

課題番号                :S-19-NI-0031

利用形態                :技術代行

利用課題名(日本語)    :Cs含有珪酸塩ガラスの119Snメスバウアー分光測定

Program Title (English) :Mössbauer Spectrum measurement of 119Sn in Cs-bearing silicate glass

利用者名(日本語)      :小暮敏博

Username (English)     :T. Kogure

所属名(日本語)        :東京大学 大学院理学系研究科

Affiliation (English)  :Graduate School of Science, The University of Tokyo

 

 

1.概要(Summary )

福島原発事故において破損した原子炉から放射性セシウム(Cs)を含む放射性微粒子が放出された.この微粒子は珪酸塩ガラスでできており,Cs以外にFe,Zn,Snなどの遷移金属元素が含まれている.これら遷移金属の価数は原子炉内の酸化還元雰囲気を反映していると考えられる.我々はX線吸収分光等により,この微粒子中のFeはほぼFe2+になっていることを明らかにしたが,Snの価数はその濃度が低く測定できていない.一方,我々はこの微粒子と組成がほぼ等しい珪酸塩ガラスの合成条件を調べている.炉中の酸素分圧を下げることによってFeを2価にした均一なガラス試料が作製できたが,そのときのSnの価数を明らかにすべく,この合成ガラス中の119Snメスバウアー分光測定を実施した.

2.実験(Experimental)

[試料] 合成時の酸素分圧が異なる2つの試料についてスペクトルを測定した.

NaCs-1:ガラス原料を大気中1400℃ 1 hr.で溶解してクエンチ.(SnO成分は数wt%,原料としてはSnOを使用.320 mg)

QFM-2:NaCs-1をlogPO2 = QFM-2という低酸素雰囲気1400℃ 1 hr. で再溶解してクエンチ(152 mg).

[測定条件] 各粉末試料を,シリコーン製真空グリースと練り合わせて純Al箔の間(折りたたみ後の面積15x15 mm2)に塗り込み,通常の透過法により室温における119Snメスバウアースペクトルを測定.線源のドップラー速度範囲は ±8 mm/s.速度校正はa-Fe箔標準試料を用いて行い,119Snスペクトルの速度0 mm/sはCaSnO3(Sn4+)標準試料のスペクトルのピーク位置に設定.119Sn測定の線源はCa119mSnO3(約82 MBq)で,ガンマ線検出にはNaIシンチレーションカウンタを使用.線源のSnから出る妨害K-X線カット用フィルターとしてPd 50 mm箔を使用.測定時間は約50時間程度とした.

3.結果と考察(Results and Discussion)

上図が2つの試料の119Snのメスバウアースペクトルの測定結果であり,明らかに違いが現れた.これを図のように2本2組のピークでフィッティングし,その面積からSn4+(青)とSn2+(緑)の比を求めた.大気中で溶解させたNaCs-1では13.5 %,それを低酸素分圧で再溶解させてQFM-2では34.5 %がSn2+となり,明らかに低酸素分圧によってガラス中のSn2+は増加したが,どちらも2つの価数は混在することがわかった.尚,より正確な量比を出すには2つの価数のSnの無反跳分率の違いの補正を考慮しなくてならないが,今回はここまでの解析で終了することにした.

4.その他・特記事項(Others)

名古屋工業大学工学部の壬生 攻教授に測定と解析をお願いした.謝意を表したい.

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)

なし

6.関連特許(Patent)

なし

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