利用報告書

Cu-Niナノワイヤ生成機構解明に関する研究
バラチャンドラン ジャヤデワン
1) 滋賀県立大学工学研究科

課題番号 :S-16-JI-0060 (S-15-JI-0045)
利用形態 :技術代行
利用課題名(日本語) :Cu-Niナノワイヤ生成機構解明に関する研究
Program Title (English) :Elucidation of the formation mechanism of (Cu-Ni) nanowire
利用者名(日本語) :バラチャンドラン ジャヤデワン
Username (English) :Balachandran Jeyadevan
所属名(日本語) :1) 滋賀県立大学工学研究科
Affiliation (English) :1) The University of Shiga Prefecture

1.概要
導電性材料として注目されている銅ナノワイヤは、色や酸化雰囲気中における安定性などの問題が指摘されている[1,2]。他の金属による銅ナノワイヤの被覆が提案されており、過去に本研究室では、アルコール還元法を用いた、ワンポットプロセスでのニッケル被覆銅ナノワイヤの合成に成功した[3,4]。しかし、透明電極への応用においては、銅の組成の増加、直径の削減などが求められる。そこで本研究では、NWsの組成・寸法制御を行なうために、ニッケル被覆銅ナノワイヤ(Cu@Ni NW)合成条件の最適化、および生成機構の解明を目的とした。

2.実験
Cu@Ni NWの合成: 還元溶媒として1-ヘプタノールを用い、CuおよびNiの金属塩を溶解させた。更にNWの凝集を防ぐために界面活性剤であるオレイルアミンを適量加え、窒素雰囲気下で加熱・攪拌した。反応終了後、室温まで冷却し、トルエンとイソプロパノールを用いて洗浄、回収を行った。
Cu@Ni NWsの評価:得られた試料に対し、結晶相同定、形態観察、化学組成分析および表面分析を、それぞれX線回折(XRD)装置、電解放出型走査型電子顕微鏡(FE-SEM)・走査透過型電子顕微鏡(STEM)、X線光電子分光(XPS)を用いて行った。また、様々な温度における反応溶液中の化合物の同定を、その場観察可能なXAFS-UV-vis同時測定セルを用いて測定を行った。Cu KおよびNi K吸収端におけるXAFS測定実験は、19素子SSDを用いた蛍光収量モードで、(財)高輝度光科学研究センターSPring-8産業利用ビームラインBL14B2において行った。また、ナノワイヤ中のCuおよびNi原子の分布分析においては、ナノテクノロジープラットフォーム事業通じて原子レベルの分析が可能な、エネルギー分散型X線分析装置が装備されている原子分解能走査透過型電子顕微鏡・STEM-EDX(エネルギー分散型X線解析)装置、(日本電子 JEM-ARM200F)を用いた。

3.結果と考察
金属塩の投入比を変更することで、ナノワイヤの組成制御を行ない、Cu:Ni = 20:80からCu:Ni = 50:50の組成を有するナノワイヤを高収率で得ることに成功した。(Fig. 1(a)(b)) しかし、銅の組成を60%以上に増加させるとナノワイヤの収率が落ち込み、ニッケルの還元が困難となった。(Fig. 1(c)) 特に、Cu:Ni = 70:30の組成では、沈殿物を得ることができなかった。(Fig. 1(d)) より銅組成がより高いナノワイヤを得るために、ナノワイヤの生成機構の解明を試みた。
ナノワイヤを生成するためには核生成の段階で(111)面のみで構成される十面体の多重双晶粒子の形成が必要である。
生成する核の形状を制御するためには、金属イオンの還元が重要と考え、加熱時における溶液のXAFSおよびUV-visのその場測定を行った。各温度におけるXAFSおよびUV-vis吸収スペクトルからは、どちらも温度変化に応じて変化しており、それらのスペクトルの解析結果に基づいて金属塩の溶解から、錯形成および金属イオンの還元までの機構について推測した。それに加えて、析出物の時間分解サンプリング分析結果などを参考に、ニッケル被覆銅ナノワイヤの生成機構を推測した。また、生成機構解明を目指した実験結果の一部として得られたCu-Ni NWおよびCu-Co NTのSEM像および元素マッピング結果をFig. 2示す。詳細については省略する。
金属塩は、溶解すると系内に含まれるアミンと錯形成を行う。加熱するにつれて、金属錯体の配位状況が変化する。アルコールを含んだ層状構造を有する水酸化ニッケルが形成する。還元反応でNi0が生成し、ガルバニック置換反応を経由することで銅イオンが還元される。その後、銅ナノワイヤが形成し、ニッケルによる被覆が起こる。しかしながら、粒子の異方成長を促進する直接的な要因は、未だ不明であり、また生成機構に基づいたCu-rich NW生成も困難であった。
そこで、合成プロセスの制御によって、Niの析出を抑え、Cu:Ni =85:15のCuNi NWsやCu NWsを得た。また、Ni析出直前で得られたCu NWs表面に銀を析出させ、高収率で銅組成の高い直径30 nmの銀被覆銅ナノワイヤの合成に成功した。

本研究で得られた、銅組成の高いCu-Ni NWsや銀被覆Cu NWsは工学的応用の観点から、化学反応触媒や透明電極としての応用が期待できる。Cu-Ni NWsの触媒能を色素分解反応によって評価した結果、純CuおよびNi金属粒子よりも優れた性能が確認された。銀被覆Cu NWの透明電極材料としてのポテンシャルは高いと思われるが、更なる寸法の制御などが必要であり、生成プロセスの最適化が今後の課題となる。

参考文献
[1] R. Long, S. Zhou, B. Wiley, and Y. Xiong, Chem. Soc. Rev. 43 (2014) 6288.
[2] H. Guo, N. Lin, Y. Chen, Z. Wang, Q. Xie,
T. Zheng, N. Gao, S. Li, J. Kang, D. Cai, and D.-L.
Peng, Sci. Rep. 3 (2013) 2323.
[3] 加藤勇希、滋賀県立大学工学部材料科学科、学士論文、2013
[4] 石島政直、滋賀県立大学工学部材料科学科、学士論文、2014

4.その他・特記事項
本研究の成果は、学術論文として投稿する準備を行なっていることから、一部の結果のみについて記述する。
5.論文・学会発表
石島 政直 他、日本化学会第96回春季年会、2016年3月24日~27日同志社大学 京田辺キャンパス、4D1-43,
M. Ishijima et al., 2nd International conference on polyol mediated synthesis, 11th – 13th July, 2016, Hikone, Japan
M. Ishijima et al., XIII International Conference on Nanostructured Materials, 376-XR7G-172, 8th-12th August, 2016, Quebec, Canada

6.関連特許
Cu-Niナノワイヤおよび製造方法、特願20

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