利用報告書

III-V族半導体基板の表面終端構造によるトポロジカル物質薄膜の改質
大坪嘉之
大阪大学大学院生命機能研究科/理学研究科

課題番号 :S-18-MS-0048
利用形態 :共同研究
利用課題名(日本語) :III-V族半導体基板の表面終端構造によるトポロジカル物質薄膜の改質
Program Title (English) :Improvement of topological ultrathin films by surface termination structure
of III-V semiconductor substrates
利用者名(日本語) :大坪嘉之
Username (English) :Y. Ohtsubo
所属名(日本語) :大阪大学大学院生命機能研究科/理学研究科
Affiliation (English) :Graduate School of Fontier Biosciences/Science, Osaka University

1.概要(Summary )
物質内部(バルク)の対称性により分類される、いわゆるトポロジカル物質に関する研究はここ10年の物性物理学における中心的なテーマの1つである。申請者等はこれまで、半導体基板上にトポロジカル絶縁体薄膜およびその関連物質薄膜をよく制御された形で作製し、本装置やUVSORビームラインを用いた角度分解光電子分光(ARPES)実験によりその特異な電子状態を明らかにしてきた。
本研究では、トポロジカル物質であるα-SnおよびBiを格子定数の整合した半導体であるInSb基板の(001)表面上に成長させるのに際して、その基板の終端構造を変化させることによる上層トポロジカル物質薄膜の、トポロジーにより保護された表面電子状態への影響と制御可能性を探ることが目的であった。

2.実験(Experimental)
本研究では「機能性バンド構造顕微分析システム」を利用し、超高真空下でInSb(001)表面における複数の基板終端構造を作製し、その上に成長させたトポロジカル物質薄膜の表面電子状態をARPESにより調査する計画であった。
InSb(001)基板は、まず希ガススパッタリングと基板加熱の繰り返しによって清浄化する。これにより得られる清浄表面が第一の終端構造である。これに加えて、ハロゲン吸着と熱脱離により表面からIII族元素であるInを選択的に除去することで得られるSb-richなc(4×4)表面も作成し、両者におけるトポロジカル物質薄膜成長の差異を観察する予定であった。

3.結果と考察(Results and Discussion)
 前述の実験計画であったが、実施に際して問題が生じ、計画を消化することができなかった。
 InSb(001)基板の清浄化は問題なく行えたが、真空中で吸着すべきハロゲンガスの生成が計画通りには行えなかった。ハロゲンガスは銅等を腐食するため、超高真空下の実験では必要最低限の微少量だけを真空槽内でその場生成する固体電気化学セル(ハロゲン化銀の電気分解セル)を用いることが一般的である。本研究でもこれにならい、電気化学セルを作製し、申請者所属機関における予備実験を経て装置に導入した。しかし、本装置をもちいても計画されたハロゲンガスを生成することができなかった。原因は未だ不明であるが、限られたマシンタイム中には究明できず、計画された実験はこの理由から行えなかった。

4.その他・特記事項(Others)
 本研究は分子研所員の田中清尚准教授、出田真一郎助教との共同研究であり、両者との緊密な協力により初めて可能になったものです。この場を借りて御礼申し上げます。

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし

6.関連特許(Patent)
なし

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