利用報告書

KI結晶中に生成したサイズの異なるAgIナノ結晶の光学応答の研究
河相武利, 沢田弘一(大阪府立大学・理学系研究科)

課題番号 :S-20-MS-1033
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :KI結晶中に生成したサイズの異なるAgIナノ結晶の光学応答の研究
Program Title (English) :Optical response of different-sized AgI nanocrystals in a KI crystal matrix
利用者名(日本語) :河相武利, 沢田弘一
Username (English) :T. Kawai, K. Sawada
所属名(日本語) :大阪府立大学・理学系研究科
Affiliation (English) :Osaka Prefecture University, Graduate School of Science

1.概要(Summary )
結晶サイズがナノスケールになると、量子効果のひとつである閉じ込め効果によって、結晶サイズに依存して励起子遷移エネルギーが高エネルギー側にシフトする。アルカリハライド結晶中に作製した銅ハライドのナノ結晶では、ナノ結晶サイズが熱処理条件によって変わることが知られている。本研究では、熱処理条件を変えることによって、KI結晶中にサイズの異なるAgIナノ結晶を作製し、その光学特性を調べることを目的とする。

2.実験(Experimental)
測定に用いたKI:AgI単結晶は、0.01mol%のAgIを添加した原材料からブリッジマン法を用いて作製した。切り出した結晶の一つは600℃で2時間熱処理した後、6時間かけた室温まで徐冷した(Sample A)。もう一つは、200℃で1時間熱処理した後室温まで急冷した(Sample B)。
発光スペクトルや励起スペトルの測定は、持ち込んだ液体窒素用クライオスタットの冷却ステージに試料を取り付け、液体窒素温度で分子科学研究所・機器センターの高感度蛍光分光光度計(SPEX Fluorolog 3-21)を用いて行った。

3.結果と考察(Results and Discussion)
前回の機器利用の実験測定から、AgIのナノ結晶は3.0eV付近に吸収を持ち、その低エネルギー側にストークスシフトを伴った発光を示すことが分かっている。今回の二つの試料共に、3.0eVより低エネルギー側に幅広の発光バンドを示した。
図は、発光バンドの2.82eVを受光したときの励起スペクトルである。Sample Aでは、2.88eVから急激に立ち上がり、2.97eV付近にブロードなピークがあることが分かる。一方、Sample Bでは、2.88eV付近から立ち上がり2.93eVに肩構造を示すが、2.98eVより更に急激に立ち上がり、3.06eVにピークを示す。それぞれのピークは、励起子のピークエネルギーに対応していると考えると、Sample Bの励起子はSample Aの励起子より高エネルギー側に位置していることになる。つまり、この結果より、Sample BのAgIナノ結晶のサイズの方が、Sample Aより小さいことになる。試料作製時の熱処理条件と考え合わせると、より小さなAgIナノ結晶の作製には、200℃程度の熱処理が必要であることが分かる。

4.その他・特記事項(Others)
なし。

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし。

6.関連特許(Patent)
なし。

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