利用報告書
課題番号 :S-20-NU-0006
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :Li2(Sr,Ca)(Nb,Ta)2O7の示差走査熱量測定による相転移温度の特定
Program Title (English) :Determination of the phase transition temperature of Li2(Sr,Ca)(Nb,Ta)2O7 by DSC measurements
利用者名(日本語) :白邦裕千,
Username (English) :H. Shirakuni, A. Nakano
所属名(日本語) :名古屋大学大学院理学研究科
Affiliation (English) :Department of physics, Nagoya University
1.概要(Summary )
本課題では我々のグループで作製した様々な物質について、DSCによる相変化の様子や、単結晶X線回折による相同定を目的としている。当初の計画であるLi2(Sr,Ca)(Nb,Ta)2O7の示差走査熱量測定では有意な成果は得られなかったが、同物質における単結晶X線回折では試料同定に成功した。さらには、最近結晶成長した単結晶試料の新物質Ta2Pd(Se1-xSx)6について、単結晶X線回折装置を用いて置換量変化に伴う構造変化を解析したところ、置換量xの増加に伴い格子定数が系統的に変化するという大きな成果を得ることができた。本報告書ではこれについて報告する。
2.実験(Experimental)
試料はI2を用いた気相輸送法により成長させたTa2Pd(Se1-xSx)6単結晶(x = 0, 0.05, 0.1, 0.2, 0.75, 0.9, 1)であり、これらを実験室にてガラス棒の先端に接着し、持ち込んだ。利用した微小単結晶X線構造解析装置(リガク社製VariMax)は低温用窒素ガス吹付、CCD検出器、およびω,φ,2θの3軸回折系からなる。一試料あたりの測定時間はおよそ3分程度であり、15°おきに0.5°試料を回転させる測定を12回繰り返すことで、12枚分の異なる結晶方位角でのX線回折パターンを得た。解析ソフトウェアCrysAlisを用いることで回折パターンに指数付けを行い、最終的に最小二乗法により格子定数を決定した。
3.結果と考察(Results and Discussion)
図はTa2Pd(Se1-xSx)6単結晶の置換量変化に伴う格子定数の変化を示している。置換量の増加に伴い、格子定数が線形に小さくなることがわかった。これはSeよりも原子半径の小さなSを置換していることに矛盾しない。我々のグループで測定した電気抵抗率等の輸送特性も、置換量に大きく依存することが分かっており、今後は結晶構造と輸送特性の相関を議論する予定である。
図:Ta2Pd(Se1-xSx)6単結晶における格子定数の変化
4.その他・特記事項(Others)
なし。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
・白邦裕千、中埜彰俊、寺崎一郎、谷口博基、永井隆之、今枝泰隆、横田紘子、「擬Ruddlesden-Popper型強誘電体Li2(Sr1-xCax)(Nb1-xTax)2O7の構造ー物性相関」
日本セラミクス協会2021年年会
・中埜彰俊、丸岡うらら、谷口博基、寺崎一郎
「層状遷移金属カルコゲナイドTa2PdSe6の巨大電力因子」 日本物理学会第76回年次大会, 15pH3-11
・丸岡うらら、中埜彰俊、谷口博基、寺崎一郎
「新規熱電半金属Ta2PdSe6のS置換効果」
日本物理学会第76回年次大会, 15pH3-12
6.関連特許(Patent)
なし。